2018 Fiscal Year Research-status Report
プロテインS/Mer受容体型チロシンキナーゼによる妊娠維持機構の解明
Project/Area Number |
18K09253
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
關谷 暁子 金沢大学, 保健学系, 助教 (10452111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関塚 真美 金沢大学, 保健学系, 准教授 (60334786)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロテインS / TAMレセプター / Merチロシンキナーゼ / 妊娠 / 不育症 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
プロテインS(PS)低下症は初期流産および後期不育症のリスクファクターである。近年、PSは抗凝固作用以外にも、Tyro3/Axl/Merレセプターファミリー(TAMR)のリガンドとして様々な生理作用を担うことが報告されている。本研究は、TAMRのひとつであるMerチロシンキナーゼ(Mer)が、PSとともに妊娠維持に重要な役割を担っていると考え、その機構を明らかにすることを目的としている。 平成30年度は、Merの細胞外ドメインである可溶性Mer(sMer)の、健常非妊娠女性ならびに妊娠時における経時的変化を測定し、今後不育症妊婦のデータを比較するための基礎的データを得た。同時に血中PS濃度も測定し、sMerとの関連性について検討した。その結果、①血漿中sMer濃度は妊娠経過とともに増加し、34-38週(11.0±4.1)(平均±S.D.)では非妊娠時(5.9±1.4)のおよそ2倍となった。②健常女性の非妊娠時における血中総PS濃度および活性とsMer濃度には正の相関関係が認められた。今回観察された、健常妊婦における妊娠後期の血中sMer増加は、自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスにおける血中濃度に匹敵する。SLEにおける血中sMerの増加は、自己免疫反応の活性化に寄与していると考えられている。今回、血中妊娠期において血中sMer濃度が増加していたことは、妊娠中の免疫調節にMerが何らかの役割を果たしていることを示唆する。血中総PS濃度および活性とsMer濃度には正の相関関係が認められた理由は不明であるが、PSとMerは相互に作用しあってはたらくため、類似の発現調節を受けている可能性がある。この結果を元に、今後は不育症妊婦におけるsMerの血中濃度との比較を行い、血中sMerが妊娠予後判定や、不育症の妊娠経過観察の有用なマーカーとなるかどうかを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属機関の施設老朽化に伴う改修工事のため、研究実施場所を使用できない期間があった。また、購入しても設置する場所が確保できないため、実験機器の購入を一部見送った。
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Strategy for Future Research Activity |
施設改修工事に対応するため、実験の順序を入れ替え、2020年度に実施する予定であった妊娠期の血中sMer濃度の検討を、2018年度に実施した。培養細胞を用いた実験を2019年度以降に実施することとする。
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Causes of Carryover |
所属機関の施設老朽化に伴う改修工事のため、研究実施場所を変更することになった。現在、一時的に別の場所で研究を遂行しているが、実験装置や器具を置く場所が十分にない状況である。次年度に完成した実験室に再び移動することになるため、当該年度は装置や機器の購入を最小限に留め、他の研究室から借りるなどして対応していた。 改修工事の終了後に、当初購入する予定であった装置や器具を購入する予定である。
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