2019 Fiscal Year Research-status Report
Identification of the upstream regulatory genes specific to the subtypes of uterine leiomyoma without the MED12 mutation
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18K09262
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
佐藤 俊 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10534604)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 子宮筋腫 / 遺伝子発現 / 発生・進展 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、MED12の突然変異が子宮筋腫の約70%で検出され、発生に関与するドライバー変異であることが示唆された一方、残り30%のMED12変異がない子宮筋腫(MED12(-)筋腫)では、発生機序の手掛かりは全く得られていない。我々は独自の解析からMED12(-)筋腫にはDNAメチル化プロファイルが異なる3つのサブタイプが存在することを見出し、これらのサブタイプ毎の解析により、これまで混沌としていたMED12(-)筋腫の発生機序が解明できる可能性に至った。本研究では、サブタイプ毎に子宮筋腫の発生に関わるマスター遺伝子を同定し、各サブタイプにおける発生機序の解明を目指した。 Ⅰ. MED12(-)筋腫の各サブタイプに特異的なマスター遺伝子候補の選出:我々はこれまでにエピ変異により発現変異したマスター遺伝子が子宮筋腫の発生に関与するという仮説の基、DNAメチル化とmRNA発現データを用いた統合解析による候補遺伝子の抽出法を確立した。本研究では3つのMED12(-)筋腫のサブタイプ毎に候補遺伝子を抽出するため、各サブタイプについて3検体のDNAメチロームとトランスクリプトームデータを得た。その結果、MED12(-)筋腫はいずれも、ECM産生関連の遺伝子の発現がMED12変異を有する筋腫より低下していること等が明らかになった。現在、得られたデータを基に候補遺伝子を選出している。 Ⅱ.in vivoにおける腫瘤形成を指標にしたマスター遺伝子の同定:子宮筋腫では平滑筋細胞が筋腫細胞に変化したことを示すマーカーがないため、培養系での機能解析が難しい。そこで候補遺伝子の発現を改変した細胞株をマウスの腎被膜下に移植する異種移植系を用い、腫瘤形成を指標とした機能解析を行い、子宮筋腫の発生に関与する遺伝子を同定する。現在までに、初代培養の筋腫細胞を移植した場合に腫瘤を形成する異種移植系を確立している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成31年度の到達目標としていたマスター遺伝子候補の抽出が未だ続行中である。本研究ではMED12変異を持つ筋腫、3つのサブタイプのMED12(-)筋腫および正常筋層のそれぞれから各3検体のトランスクリプトームデータを得る必要があった。しかし、全検体の回収を同時に行えず、トランスクリプトーム解析を何回かに分けて外注したところ、途中で受注業者が変更になる等のアクシデントもあり、サンプル間の正規化がうまくいかなかった。そのため、全サンプルデータを受注し直すことになり、予算的にも時間的にも大きな損失が出てしまった。結果的にはより信頼度の高いデータを得ることになり、今後の解析におけるバイアス等が軽減されたことは前向きに評価している。 発現改変細胞株をマウス腎被膜下に移植する異種移植系については、平成31年度中の確立を目指したが達成できなかった。異種移植系については平成30年度までに、ヌードマウスではなく、重度免疫不全マウスNOD-Scidを宿主動物として用いることで移植した細胞凝集塊の生着率が上昇することを明らかにした。しかしながら、移植後8週間で細胞凝集塊を移植した腎臓を回収し、腫瘤形成を調べた結果、移植したヒト不死化子宮平滑筋細胞の生着は確認されたものの増殖は確認されなかった。そこで平成31年度は、移植の手技的問題であるかを検証するため、コントロールとして初代培養の子宮筋腫細胞を同条件で移植した。その結果、移植した凝集塊は増殖し、形態的に生体と類似した腫瘤が形成され、移植技術は問題ないことが明らかになった。そのため、発現改変細胞の移植で腫瘤形成しない理由として、使用した細胞株がマウスの生体環境において良好に増殖出来ないことが考えられた。今後は、遺伝子改変および異種移植に用いる細胞をヒト不死化子宮平滑筋細胞株から、初代培養の筋腫細胞に変更する等、大幅な研究方針の変更が必要になった。
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Strategy for Future Research Activity |
Ⅰ.各サブタイプに特異的なマスター遺伝子候補の選出:前述したDNAメチロームとトランスクリプトームデータを用いた統合解析により、サブタイプ毎にDNAメチル化変異を伴い発現変化している上流の制御遺伝子を選出する。 Ⅱ. マスター遺伝子候補を発現改変した細胞の樹立:ヒト不死化子宮平滑筋細胞を用いた安定発現細胞株の樹立から、初代培養の子宮平滑筋あるいは筋腫細胞を使用した一過的発現改変細胞の樹立に変更する。この方法では、移植した細胞の発現改変が移植期間を通じて維持されないことが懸念される。そのため、これまで同様にヒト不死化子宮平滑筋細胞による安定発現細胞株を用い、初代培養の線維芽細胞等を混合することで生着・増殖を向上できるかも同時に検討する。 Ⅲ. 発現改変細胞をマウス腎被膜下に移植する異種移植:腫瘤形成を指標とした機能解析により子宮筋腫の発生に関与する遺伝子を同定する。NOD-Scidマウスで腫瘤が形成されない場合、より重度に免疫不全であるNOGマウスの使用を検討する。 Ⅳ. 生体マウスの子宮に遺伝子発現を改変するウイルスベクターを直接感染させる導入系:上記の異種移植が確立出来なかった場合、候補遺伝子の発現を改変するレンチウイルスベクターを生体マウス(近交系マウスC57BL/6等)の子宮に直接感染させる導入系を検討する。 Ⅴ. 同定したマスター遺伝子による各サブタイプの子宮筋腫における発生機序の検討:マスター遺伝子の下流で発現変化する遺伝子を明らかにし、筋腫発生の分子機構に関する知見を得ることを目的として、トランスクリプトーム解析を行う。同定した各サブタイプ特異的なマスター遺伝子の発現を改変した細胞とコントロール細胞を比較して発現変異した遺伝子を抽出する。抽出した遺伝子をパスウェイおよびネットワーク解析に供し,マスター遺伝子の発現変異で影響を受けたシグナル経路および遺伝子群を特定する。
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Causes of Carryover |
平成31年度に達成予定だったマスター遺伝子候補の選出が出来なかったため、それ以降の遺伝子発現を改変した細胞株の樹立まで実験が進まなかった。そのため、「物品費」の消耗品では、細胞株の樹立に使用するウイルスベクター関連試薬・細胞培養関連および樹立した細胞株の発現確認に使用するウェスタンブロッティング用試薬の代金が使用されずに残った。また、樹立した細胞株のマイクロアレイ解析も行えなかったため、「その他」のマイクロアレイの外注にかかる費用が残った。 使用計画:最終年度は遺伝子発現を改変した細胞株の樹立を行うため、次年度使用金は上記の消耗品(ウイルスベクター関連試薬・細胞培養関連・ウェスタンブロッティング用試薬)とマイクロアレイの外注に使用する。また、樹立した細胞株の移植実験のため、マウスの購入・飼育費等にも使用する。
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Research Products
(10 results)