2018 Fiscal Year Research-status Report
子宮内膜症の微小環境における酸化還元反応のバランス変化に基づく発癌仮説の構築
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18K09269
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
山田 有紀 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20588537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
棚瀬 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20423915)
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
川口 龍二 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (50382289)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 卵巣がん / 酸化ストレス / 癌化 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮内膜症は、200万人以上の女性が罹患する疾患であり、月経痛、不妊症、そして卵巣癌の合併と、女性のQOLを最も低下させる疾患である。我々は前方視的臨床研究により、6,398人の卵巣子宮内膜症性嚢胞患者から、46人の卵巣癌患者が発生し、自然発生卵巣がんに比べ8倍以上の高率で癌化が起こる。その病理組織型は明細胞癌が約4割を占める。明細胞癌は漿液性癌と異なり、抗癌剤耐性を示し予後不良であるため、発癌機序の解明と発癌の予防が急がれる。チョコレート嚢胞では鉄による酸化ストレスがきわめて強いため、ほとんどの内膜症上皮細胞は徐々に死滅する。しかし、何らかの方法で一部の細胞が抗酸化能を獲得し、持続的な酸化ストレスを蓄積することで、DNA損傷を引き起こし、発癌に至ると我々は考えている。 本年度は、まずその酸化・抗酸化環境を調べるために、子宮内膜症性嚢胞、内膜症関連卵巣癌における腫瘍内容液の鉄濃度を測定した。また酸化ストレスマーカーである8-OhDG、ヘムオキシゲナーゼ1、抗酸化能としてTAC(総抗酸化能)を測定した。その結果、子宮内膜症性嚢胞で有意に鉄濃度(総鉄、自由鉄、ヘム鉄いずれも)が高いことがわかった。またDNA損傷マーカーとしても使用される8-OHdGも子宮内膜症性嚢胞で有意に高値であった。これは持続的な酸化ストレスによりDNA損傷が起こっていることを示唆する。逆にTACは内膜症関連卵巣癌で高値となっており、癌化した際には抗酸化能が有意な環境となっていることがわかった。またNrf2により制御されているHO-1は内膜症性嚢胞で高く、内膜症が癌化する時に何らかの影響を与えている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
摘出した腫瘍内容液を用いて、酸化抗酸化環境の違いを明らかにすることができた。組織標本はすでにサンプリングが終わっており、これらのサンプルを用いて次年度の研究を進めることが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍内容液を測定することで、内膜症性嚢胞と内膜症関連卵巣がんにおける酸化抗酸化環境の違いが明らかとなった。来年度は、HO-1も含めて摘出標本の組織を用いて同様の実験を行う。またこれをもとに細胞実験をおこない、癌化モデルを作成していきたい。
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Causes of Carryover |
来年度に腫瘍組織における免疫組織化学染色と、不死化上皮細胞を用いたin vitro実験を予定している。新しいセルラインの購入が必要であり、次年度に繰り越しとした。
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