2020 Fiscal Year Research-status Report
子宮体部漿液性癌の治療抵抗性を克服する新規治療法の開発
Project/Area Number |
18K09287
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
馬場 長 岩手医科大学, 医学部, 教授 (60508240)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 隆介 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (40782363)
万代 昌紀 京都大学, 医学研究科, 教授 (80283597)
Brown John 京都大学, 医学研究科, 講師 (90583188)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 子宮体癌 / 漿液性癌 / マウスモデル / MDSC |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度までは、得られた実験結果(①STAT1のセリンリン酸化がSTAT1を高発現する子宮体部漿液性癌(SEC)腫瘍細胞のプラチナ耐性機構について関与すること、②CK2阻害剤によりセリンリン酸化を抑えることでSECのプラチナ耐性を解除できること)を英文論文報告した(Int J Cancer)。さらに、同所性のSEC免疫正常マウスモデルを確立し、子宮腫瘍の形成および局所免疫状態の評価を達成した。その成果については、第77回日本癌学会学術総会にて英語口演に採択され、報告した。さらに、SECと似た病理形態、臨床経過を辿る卵巣漿液性癌の子宮同様、治療抵抗性を示す卵巣漿液性癌において抗VEGF抗体治療を通してMDSCが抗腫瘍免疫抑制状態を惹起する機構とその打開策についても論文報告を行い(Br J Cancer)、SECの抗腫瘍免疫寛容を解除する糸口を見出した。 2020年度は前年度までに成果をえたテーマである宿主-腫瘍相互シグナル伝達機構についてmiRNAを介した卵巣漿液性癌の解析を行うとともに、子宮体癌の発生母地としての子宮内環境の検証を行い、論文報告を行った(Oncol Lett; Obstet Gynecol Int J)。プラチナ製剤耐性腫瘍の病態については腫瘍休眠の観点から治療標的とする可能性について探索を進めてきた成果を論文報告した(Mol Cancer Ther.)。腫瘍局所の免疫寛容を打破する治療法開発については抗PD-L1製剤の有効性を助長する可能性を有した腫瘍溶解ウイルス療法を子宮頸癌マウスモデルにて行い、論文報告した(Int J Clin Oncol.)。MDSCとは異なるメカニズムについても研究を進め、多面的に抗腫瘍免疫治療を実現する今後の発展性を探索している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の本研究計画予定は、①STAT1経路ないしSEC-Msigを標的とする治療の有効性の検証、②SEC-Msigに基づく新規診断法の開発であった。 ①については上述した通り、STAT1経路を標的とした治療抵抗性克服について2019年度中に英文論文報告を行い、まずは当初の計画について一つの成果を得た。さらに、表現型の異なるマウス子宮腫瘍組織の免疫プロファイルを行い、SECモデルで子宮腫瘍内にMDSCが多く、CD8+T細胞の浸潤が少ない傾向があることについて再現性を確認し、MDSC除去治療の有効性について生体モデルで検証を行った。 ②については、①と関連付けるために、2つマウス腫瘍モデルでRNAseq解析を行い、ケモカイン発現の差異を検証し、SEC-Msigがもたらす免疫寛容状態を定量的に把握できる系の構築を進めている。また、MDSCの働きを抑えて免疫寛容状態を低下させるケモカインを同定することで抗腫瘍治療強度も上げられるかについて検証を進めている。これらの成果を論文報告できるように現在、準備を進めている。 以上の通り、それぞれの研究計画について当初の成果が得られた部分もあるが、2020年度は上半期から下半期を通してコロナ禍にあり、各実験施設でのオンサイトの研究が著しく制限されたため、マウス腫瘍実験計画が大幅に繰り延べになった。共同研究施設とのオンラインでの意見交換を行い、お互いの知見を交換することで当初想定していなかった成果も得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度までの研究計画とこれまでに得られた研究成果を融合させて2021年度以降の研究を進める。2020年度は一年を通してコロナ禍にあり、各実験施設での研究遂行が著しく制限された。2021年度もコロナ禍は継続することが予想されており、研究計画は柔軟に調整を加える予定である。 ①STAT1経路ないしSEC-Msigを標的とする治療の有効性の検証:CK2阻害剤によりSTAT1経路のセリンリン酸化を抑えることについては論文発表が完了したが、免疫寛容との連動は未解明のままである。今後は自家正常免疫機構を保持するSECモデルを用い、SEC-Msigを標的とする治療の有効性について検証を進める。すなわち、MDSC除去治療の有効性についてマウス治療実験を進めると共に、多施設からの臨床検体を用いてSEC-Msigの妥当性追試を研究分担者と進める。 ②SEC-Msigに基づく新規診断法の開発:上述した担癌免疫健常マウスの治療実験を通してSEC-Msigの活性変動を検討する。教室内の別グループが腫瘍腺管と腫瘍間質を分離して培養・解析する実験系を立ち上げている。他因子が腫瘍細胞に総体としてどのように影響を与えるか、抗腫瘍免疫作用の観点からmiRNAやエピゲノム解析を行い検証する。統計学的に独立変数となる分子の抽出を行うことができれば、ヒトのSEC臨床検体でも有効なバイオマーカーとなるかについて検討を進める。
|
Causes of Carryover |
2020年度は上半期から下半期を通してコロナ禍にあり、各実験施設でのオンサイトの研究が著しく制限されたため、マウス腫瘍実験計画が大幅に繰り延べになったため、使用予定額が前年度からさらに繰り越しとなっている。最終年度の使用予定額の残額を用いて、マウス腫瘍実験およびMDSC除去治療実験の追試を開始しており、本年度中の遂行完了を予定している。
|
Research Products
(6 results)