2018 Fiscal Year Research-status Report
新規核酸医薬を用いたアネキシンA4阻害による卵巣癌プラチナ耐性克服へのアプローチ
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18K09288
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
吉野 潔 産業医科大学, 医学部, 教授 (90362730)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 慎哉 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (00467565)
上田 豊 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (10346215)
小林 栄仁 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50614773)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / プラチナ感受性 / 核酸医薬 / アネキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣癌治療においてプラチナ製剤は最も有効な抗癌剤であり、その耐性は克服すべき課題である。我々はこれまでにプラチナ耐性を与える分子として アネキシン A4 (以下 Anx A4)を同定した。Anx A4 は細胞質に局在する蛋白質であるため薬剤が阻害効果を発揮するためには細胞膜を透過する必要がある。したがって生体内でのAnx A4機能を阻害し臨床応用するための手段としてアンチセンスオリゴ(ASO)による核酸医療が最も適切な方法であると考え研究を開始した。本研究ではまず卵巣癌細胞株の親株、プラチナ耐性株を作成し、本研究の研究協力者 大阪大学大学院 薬学研究科 生物有機化学分野小比賀教授研究室の協力のもと作製したAnx A4 ASOによるプラチナ感受性改善効果をin vitro 実験系で解析する。16種類のAnx A4 アンチセンスオリゴを作製し、そのうち5種類のAnx A4 ASOはAnx A4 の発現を抑制することをRT-PCRおよびウエスタンブロッティングで確認した。さらにin vitro の実験系において卵巣癌細胞株のプラチナ感受性を改善することを確認した。in vivoの実験系では、ヌードマウス(n=7)を用いて皮下移植された明細胞癌細胞株由来腫瘍に対してAnx A4 ASOの前投与(局注)によりシスプラチン(3mg/kg)の腫瘍縮小効果の改善が認められた。この結果は第70回日本産科婦人科学会学術講演において発表した。 次の段階としてAnx A4 ASOのin vivo におけるプラチナ感受性への影響の解析を行い、本研究期間の最終目標はPatient-Derived tumor Xenografts (PDX)におけるAnxA4 ASOのプラチナ感受性改善効果を証明することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アネキシンアンチセンスオリゴの作製、In vitro実験系においての阻害効果の確認までは順調に進んだ。しかしIn vivo 実験系における阻害効果を確認する過程において、マウスXenografted TumorにおいてもAnxA4ASOはプラチナ感受性を改善することを証明するに十分な結果が得られたが、マウスXenografted tumorの増殖スピードが一定せずアネキシンASOの投与に関して最適な条件を検討することに時間を消費したことが進捗を遅らせる原因となった。 また、一部の腫瘍ではANXA4の発現抑制効果が不十分であった。これらの原因としてASOの不安定性、投与経路の不安定性が考えられた。ASOの不安定性を改善するために、架橋構造の修飾期を変更し、アミノ基を導入した、改変型のASOを作成し、効果を検証した。また、投与経路については経静脈経路など、局所投与以外の経路について薬効の検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
Anx A4のプラチナ感受性改善効果はIn vitroにおいて確かめられている。より臨床応用に近づくためには患者由来の腫瘍における効果を確認することが求められる。発現レベルがヘテロな卵巣癌に対してASOが臨床で薬効を発揮することを検証するためにはPatient-Derived tumor Xenografts (PDX)マウスを用いた実験系が必要である。具体的には卵巣癌の手術検体を超免疫不全マウス(NOGマウス)の皮下に移植する。PDXマウスは卵巣癌患者15症例程度を樹立することを目指す。PDXマウスが樹立された際には、腫瘍組織をP0からP1に移植・継代する際に組織の一部を用いて免疫組織化学染色法により、Anx A4の発現レベルを調べる。発現レベルは卵巣癌細胞株由来のxenograftモデルと比較する。P0からP1へのNOGマウス数匹に移植すると同時に、PDX腫瘍の凍結保存も行う。PDXマウスにおける癌細胞の増殖速度は症例により様々であるが、平成30年度以降にAnx A4 ASOのPDXマウスにおける治療効果の検討を行なえる体制を整えておく。
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Causes of Carryover |
予定していた段階まで実験が進まなかったため、試薬等の購入費が少なくなり未使用額が生じた。次年度に必要用物品を購入する予定である。
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