2018 Fiscal Year Research-status Report
HPV分子を標的とした癌免疫療法剤のコンパニオン診断開発のための基礎的研究
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18K09303
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
川名 敬 日本大学, 医学部, 教授 (60311627)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 子宮頸癌 / 子宮頸部高度上皮内腫瘍(CIN2-3) / E7発現乳酸菌 / 医師主導治験 / 第I/II相臨床試験 / コンパニオン診断 / E7発現量 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮頸癌の原因であるハイリスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)の癌蛋白質E7は、子宮頸癌およびその前癌病変(CIN2-3)に高発現している。ウイルス由来の外来性蛋白質であることから、癌抗原としては、癌免疫療法の最適な標的分子と言える。本研究では、HPV16型E7を標的にした癌免疫療法を開発し、その医師主導治験を実施する体制を整えた。 この癌免疫療法は、HPV16陽性CIN2-3を対象疾患として、粘膜免疫を介した癌免疫療法である。本治験薬IGMKK16E7は、乳酸菌Lactobacillus caseiにHPV16 E7を発現させた菌体である。IGMKK16E7を経口投与することで、腸管粘膜(粘膜下リンパ組織:パイエル板)にてE7に対する粘膜免疫誘導を起こす。E7に対するTH1型粘膜リンパ球は末梢血を通って子宮頸部のCIN2-3病変にホーミングする。CIN2-3に発現しているE7に感作されたE7特異的TH1型リンパ球は、IFNgamma等のTH1サイトカインを産生し、CIN2-3に対するNK活性を高め、免疫排除につながるという薬理効果である。したがって、本治験薬の薬理効果は、E7発現量に依存する可能性がある。一方、粘膜リンパ球CIN2-3のE7分子の発現量は、症例によって個体差があることが知られている。そこで、本研究では、CIN2-3病変でのE7発現量を半定量的にモニターするアッセイ系を確立し、本治験薬の有効性を予知するコンパニオン診断薬になりうるかを検討した。本年度は、E7発現量を簡便に測定できるアッセイ系を確立することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、個々のCIN2-3患者の子宮頸部病変から採取した検体を用いて、E7発現量を評価するアッセイ系を確立することをマイルストーンとして設定した。このアッセイ系を確立できたことから達成度は100%である。E7発現量は、子宮頸部擦過細胞を採取し、Thinprep用採取容器(70%アルコール含)に収穫した。この細胞から、HPVタイピングと同時にRNAを抽出し、定量的RT-PCRを用いてE7発現量を評価するアッセイ系を樹立した。 また、医師主導治験は、PMDAに治験届を提出し、これを承認された。治験実施施設の日本大学医学部附属板橋病院におけるIRBにおいても承認された。治験薬製造が予定より2か月遅れたため、当初の予定の2019年4月開始から6月開始となった。治験実施状況としては、達成度は80%であったが、ほぼ予定どおり治験が開始されることから、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
このアッセイ系は、日本大学医学部内に設置された治験中央ラボにおいてin-houseのアッセイとして樹立されたものである。このE7発現量は、E7特異的TH1型細胞性免疫誘導能と相関性を見ると同時に、臨床効果(病理学的寛解)との相関性を見ることが重要である。2019年6月から開始される第I/II相臨床試験では、プラセボ群を置いた並行群間ランダム化比較試験であり、キーオープンは、2020年9月を予定していることから、臨床効果との対比はそれまでは難しいが、少なくとも、免疫誘導能とE7発現量の相関性は2019年度に評価可能と考えている。その結果が、ポジティブデータとなれば、本アッセイ系を簡易型キットになるような検討に入る予定である。
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Causes of Carryover |
医師主導治験の開始が、2018年度から、2019年度にずれ込んだために、2018年度の予定していた研究費を使用できなかった。そのため、2019年度に持ち越しを行った。 治験登録症例から採取された臨床検体を解析するための必要経費を持ち越した。
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Research Products
(6 results)