2019 Fiscal Year Research-status Report
Investigating viral and cellular factors defining histopathological features of cervical cancer
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18K09307
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
中原 知美 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (60601177)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 子宮頸がん / 腺がん / パピローマウイルス / p63 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦における子宮頸がんは、近年相対的に予後不良の腺がんが増加し、約25%に達している。しかし、子宮頸部腺がんの発がん機構は未解明である。本研究は、正常ヒト子宮頸部上皮細胞に、ヒトパピローマウイルス(HPV)がん遺伝子E6/E7発現と子宮頸部腺がんで頻度の高い宿主遺伝子変化を導入することにより、HPV腺がん発がんモデルの作製を目的とする。代表者らの樹立した正常子宮頸部由来上皮細胞株HCK1Tは、子宮頸がんの起源細胞であると近年報告されたSCJ細胞の形質を有する世界的に珍しい細胞株である。HCK1T細胞を用い、同一起源細胞から扁平上皮および腺がんの発がんを誘導することにより、組織型決定に関与する(1)HPV側要因および(2)宿主側要因の特定を目指す。HPV腺がんの本態を解明することにより、早期診断法や治療法の開発への発展が期待できる。 本年度は、1年度目に作製したHPV16 あるいはHPV18由来のがん遺伝子E6/E7および活性化型変異体であるKRAS(G12V)とc-MYCを発現するHCK1T細胞に、腺がんへの分化を促す可能性のある候補遺伝子の発現を単独あるいは複数組み合わせて導入し、性状を解析した。遺伝子X (非公開)を発現させると、単層培養条件下において、扁平上皮細胞の形質を制御する重要な転写因子であるp63の発現が低下した。これらの細胞をヌードマウス皮下に移植し、形成した腫瘍の病理像を解析したところ、遺伝子Xを高発現する細胞やSMAD4発現を抑制した細胞から形成した腫瘍の一部に腺がん様の形態が認められた。HPVがん遺伝子および特定の宿主遺伝子の組み合わせによる腺がんのin vitroモデルの開発という本研究目的の一つは、ほぼ達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
p63は扁平上皮細胞の特性や幹細胞性を決定する重要な転写因子である。女性生殖器発生の過程においては、p63陰性のミューラー管上皮からp63陰性の子宮内膜、p63陽性の子宮頸部および膣の扁平上皮へと分化することが知られている。SCJ細胞はp63陰性であり、リザーブ細胞と呼ばれるp63陽性細胞への分化を経て、扁平上皮細胞に分化することが報告されている。ミューラー管由来組織の分化では、間葉系細胞由来のパラクラインシグナルによる上皮細胞内のSMAD4/ERK/RUNX1 の活性化が、p63発現の誘導に重要であることが報告されている。HPV16 あるいはHPV18 のE6/E7および活性化型KRAS変異体とc-MYCを発現するHCK1T細胞において、SMAD4発現をマイクロRNA導入により低下させても、単層培養条件下ではp63発現の低下や細胞形態の明らかな変化は観察されなかった。一方で、この細胞をヌードマウス皮下に移植して作製した腫瘍は、一部に腺状構造や粘液の産生が観察され、腺がん様の病理像を示した。すなわち、マウス皮下の微小環境下において、HCK1T細胞内でSMAD4の発現が低下すると、おそらくp63発現が維持できなくなり扁平上皮の形質を失う可能性が考えられた。また、遺伝子Xを発現させると、単層培養細胞条件下でもp63発現の顕著な低下が観察された。さらにマウス皮下に形成させた腫瘍にも、一部に腺状構造や粘液の産生が観察された。つまり遺伝子X発現は、微小環境に影響されずにp63発現を制御することが示唆された。HPV18 E6/E7を発現する細胞によって形成された腫瘍は、HPV16 E6/E7発現細胞による腫瘍に比べ、腺状構造がより豊富に含まれていた。
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Strategy for Future Research Activity |
器官の発生・分化やがんの進行・維持には、線維芽細胞や免疫細胞などによってつくられる微小環境が大きく関与することが近年明らかになった。これまでの本研究の結果から、SMAD4は、正常上皮細胞と同様に、がん細胞においても扁平上皮の形質維持に重要であることが示唆された。一方で、子宮頸がんの組織型の決定には、上皮細胞内SMAD4発現に加え、微小環境が大きく関与する可能性が高いことも示された。今後は、子宮頸がんのorganoid cultureを確立し、腺がん形成に関与するパラクラインシグナルについて詳細に解析する。子宮頸部扁平上皮がんのマウスモデルでは、エストロゲンが発がんに関与することが報告されている。さらにこのマウスモデルにおいて、選択的エストロゲン受容体モジュレーターの投与により、子宮頸がん(扁平上皮がん)発がんを回避できることが示されている。エストロゲンは、ミューラー管上皮の扁平上皮への分化を抑制することが報告されていることから、子宮頸がんの組織型決定におけるパラクラインあるいはオートクラインとしてのエストロゲンの役割について解明を試みる。 HPV16およびHPV18は、それぞれ子宮頸がんで1番目、2番目に多く検出されるHPV型である。HPV16は扁平上皮がん・腺がんの検出頻度に目立った偏りはないが、HPV18は腺がんでの検出頻度が顕著に高いことが知られている。我々のモデルでもHPV18 E6/E7発現細胞はより腺がん構造を含む主要を形成する傾向が高かったことから、HPV型間のE6/E7機能の違いも組織型の決定に関わると考えられる。今後は、他のHPV型のE6/E7についても本モデルで検証し、組織型の偏りに関与するウイルス側要因の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
抗体などの分与により検出試薬の購入が少なくて済んだことや、マウスxenograftの一部を共同研究先の協力により行なうことができたため、当初の予想より研究に関わる費用を削減できた。動物実験の実績をもつ研究者の協力を得られたことから、研究が進んだだけでなく、それらに関わる手技や解析のノウハウを学ぶことができた。次年度に繰り越すことにより、今後は動物実験を独自に進める。さらに、繰越の研究費を用い、高額の培養試薬を要するorganoid cultureを計画より前倒しで進める。
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[Journal Article] Genomic Alterations in STK11 Can Predict Clinical Outcomes in Cervical Cancer Patients2020
Author(s)
Hirose S, Murakami N, Takahashi K, Kuno I, Takayanagi D, Asami Y, Matsuda M, Shimada Y, Yamano S, Sunami K, Yoshida K, Honda T, Nakahara T, Watanabe T, Komatsu M, Hamamoto R, Kato MK, Matsumoto K, Okuma K, Kuroda T, Okamoto A, Itami J, Kohno T, Kato T, Shiraishi K, Yoshida H.
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Journal Title
Gynecologic Oncology
Volume: 156
Pages: 203-210
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] An Ex-Vivo Culture System of Ovarian Cancer Faithfully Recapitulating the Pathological Features of Primary Tumors2019
Author(s)
Farhana Ishrat Ghani, Kasumi Dendo, Reiko Watanabe, Kenji Yamada, Yuki Yoshimatsu, Takashi Yugawa, Tomomi Nakahara, Katsuyuki Tanaka, Hiroshi Yoshida, Masayuki Yoshida, Mitsuya Ishikawa, Naoki Goshima, Tomoyasu Kato, Tohru Kiyono
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Journal Title
Cells
Volume: 8
Pages: 644
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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