2020 Fiscal Year Research-status Report
循環不全モデルマウスにおける前庭小脳機能障害が前庭神経核に及ぼす影響の解明
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18K09313
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高安 幸弘 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (70375533)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 虚血 / 小脳 / パッチクランプ |
Outline of Annual Research Achievements |
生後20日年齢のラットを用いて、前庭神経核を含む小脳脳幹の急性スライス切片を作成、スライスパッチクランプ法を用いて前庭小脳領域のUnipolar brush cellよりホールセル記録を行う。Unipolar brush cell はIntrinsicな発火特性を持ち、パッチクランプ下の電流注入による膜電位変化より、type Iとtype IIに識別される。その上で、無酸素無グルコース細胞外液(Oxygen-Glucose Deprivation; OGD)還流により一過性虚血状態を再現、その際の発火特性の変化をモニターすると、OGD外液還流時に、発火頻度が増加することが判明した。この現象は、ナトリウムチャネルブロッカー存在下の電流固定の実験にて、OGD還流時の脱分極変化として観察された。Unipolar brush cellの静止電位の平均値(n = 5)は-52.5 ± 0.8 mVで、これらの細胞におけるOGD外液還流中の平均脱分極は、10.6 ± 0.7 mVであった。実験を行ったUnipolar brush cellの入力抵抗を測定すると、平均値は570MΩであった。このような500~600MΩ程度の入力抵抗をもつ神経細胞において、10mV程度の脱分極を発生させる電流注入は、およそ20pA程度である。今回観察されたUnipolar brush cell Type I neuronにおいては、OGD外液還流中に発火頻度が平均で11.3 ± 3.4Hzから31.2 ± 11.03 Hzまで上昇した。これは、すなわち20Hz程度の発火頻度の上昇を示しており、20pA程度の電流注入時の10mV程度の脱分極の反応に一致する。従って、Unipolar brush cellの発火頻度の上昇はこの持続的な膜電位上昇に基づく現象であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Unipolar brush cellは前庭小脳に特異的に分布する顆粒細胞間の興奮性介在ニューロンである。末梢前庭からの一次前庭入力および前庭神経核からの2次前庭入力を受け顆粒細胞に伝達しているが、前庭機能に対するその役割は不明である。今回の実験結果より、Unipolar brush cellが一過性虚血時に著しく発火頻度が上昇する現象が確認されたことで、前庭神経核を含む前庭小脳-前庭神経核局所回路において、一過性虚血時に興奮性が増強するメカニズムとして、Unipolar brush cellが重要な役割を果たしていると想定できた。さらにUnipolar brush cellの膜特性に注目し、その発火特性変化の要因を検討すべく実験を遂行した結果、脱分極がそのメカニズムであることが明らかとなった。脱分極を生じる機序にはいくつかの候補が挙げられるが、先のプルキンエ細胞における実感結果では、グルタミン酸受容体を介した興奮毒性が虚血時の一過性変動に大きく寄与していることが示唆されていることから、Unipolar brush cellの脱分極に関しても、まず最初に虚血時のグルタミン酸受容体の活性化に注目すべきと考える。もし、虚血条件下のUnipolar brush cellの脱分極も、プルキンエ細胞で確認された自発性興奮性シナプス後電流の増加と同様グルタミン酸受容体が介在しているなら、前庭小脳における一過性虚血時の興奮毒性のメカニズムが一元的に考察できると見込まれる。前庭小脳は前庭神経核へ直接的な投射をもつことから、前庭小脳における虚血性変化が明らかになれば、前庭神経核への影響を推測できることになる。このように、研究の段階としては順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Unipolar brush cellにおけるOGD外液還流時の発火頻度の上昇が、グルタミン酸受容体を介した興奮毒性によるものであるかどうかを実験的に明らかにしていく。グルタミン酸受容体には、主にAMPA型とNMDA型の2種類が存在している。このため、もしグルタミン酸受容体が主要因の場合は、いずれのタイプがこの現象の主役を担っているかが重要と考えられる。これに関しては、選択的なチャネルブロッカー投与による薬理学的実験によって明らかにされ得ると考えられる。一方、今回、前庭神経核を含む局所回路における現象として、前庭小脳領域のUnipolar brush cellを解析しているものの、最終的な出力先である前庭神経核の神経活動において、いかなる変化をもたらすのかを突き止めるのが本研究の最終目標でもある。前庭神経核は、顆粒細胞層の情報を受けたプルキンエ細胞の抑制性出力の強力な制御を受けていると想定される。従って、前庭神経核における抑制性入力に関して、一過性虚血性刺激時に生じる活動性の変化を捕まえることを最終目的としている。
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[Journal Article] Clinical features of anti-transcription intermediary factor 1γ (TIF1γ) -positive dermatomyositis with internal malignancy and investigation of the involvement of TIF1γ expression in tumors in the pathogenesis of cancer-associated dermatomyositis.2020
Author(s)
Motegi SI, Sekiguchi A, Ikeuchi H, Sakairi T, Ogawa H, Fujii T, Sohda M, Yajima T, Ida S, Takayasu Y, Shimoda Y, Hiromura K, Saeki H, Shirabe K, Chikamatsu K, Yokoo H, Oyama T, Ishikawa O.
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Journal Title
J Dermatol
Volume: 47
Pages: 1395-1402
DOI
Peer Reviewed
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