2019 Fiscal Year Research-status Report
慢性副鼻腔炎におけるTGF-βが誘導する治療抵抗性メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K09329
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
吉川 衛 東邦大学, 医学部, 教授 (50277092)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 慢性副鼻腔炎 / エンドタイプ / TGF-β / 線維芽細胞 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性副鼻腔炎(chronic rhinosinusitis: CRS)においては、末梢血や組織中の好酸球が予後に影響を及ぼす因子として考えられており、本邦では好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic CRS: ECRS)と呼ばれている。近年、治癒率の向上を得たものの、手術や副腎皮質ステロイドの投与などの既存の治療を行っても、再燃をくりかえす難治例が少なからず存在する。このような症例では、末梢血や組織中の好酸球増多を認めないことも多く、好酸球関連以外の難治化因子の存在が示唆される。 これまで、ECRSなどのフェノタイプとは無関係な、TGF-β依存性のエンドタイプを同定し、既存の治療に抵抗性の病態との関連性を検討することを目的として研究を遂行してきた。まず、CRSにおけるTGF-βシグナル依存性エンドタイプの同定を行うため、網羅的な遺伝子発現解析によるCRSのエンドタイプ解析を行い、クラスター解析、主成分分析などを駆使し、エンドタイプを同定した。さらに、そのエンドタイプについて、Ingenuity pathway analysis(IPA)を用いて各エンドタイプの上流シグナル因子を予測し、TGF-β依存性エンドタイプを同定した。同時に、このエンドタイプの予後も含めた臨床的な背景についても調査し、治療抵抗性との関連についても検討を行った。さらに昨年度は、TGF-β依存性エンドタイプで発現変動する上流分子群、下流分子群の同定を行い、鼻組織における特異的な発現変動遺伝子を確認し、定量的PCRやWestern blottingで再現性確認を行った。 現在は、鼻粘膜由来の線維芽細胞をもちいて、TGF-βシグナルを介したエピジェネティクス誘導能解析を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度に所属機関の病院移転に伴う進捗の遅れが生じたが、2019年度以降は挽回し、順調に進捗していた。しかし、2020年初頭からのCOVID-19の感染拡大に伴い、研究の遂行を一時的に中断したため、現時点では進捗にやや遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、鼻粘膜由来の線維芽細胞をもちいて、TGF-βシグナルを介したエピジェネティクス誘導能解析を行う予定である。まず、健常者の鼻組織由来の線維芽細胞において、TGF-βが遺伝子発現誘導する際に、DNAメチル化やヒストン修飾状態に変化かあるかどうか確認する。具体的には、昨年度までに同定されたTGF-βの上流・下流遺伝子を対象とし、TGF-β刺激前後でのプロモーター領域のDNAメチル化やヒストンの化学的修飾(メチル化、アセチル化)を、メチル化DNA特異的PCR法およびクロマチン免疫沈降法で確認する。次に、慢性副鼻腔炎患者の鼻組織から線維芽細胞を培養し、健常者由来の線維芽細胞と比較検証する。最後に、TGF-βシグナルの抑制により、ここまでに同定された線維芽細胞へのエピジェネティック変化が制御可能かどうかを調べる。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた国内および国際学会での成果発表や論文執筆を行わず、それらを次年度へ見送ったため、次年度使用額が生じてしまった。翌年度分として請求した助成金と合わせて、TGF-βシグナルを介したエピジェネティクス誘導能解析のための、メチル化DNA特異的PCR法およびクロマチン免疫沈降法の試薬の購入や、最終年度における学会参加や論文投稿への諸費用に使用する予定である。
|