2018 Fiscal Year Research-status Report
難治性中耳炎に対する細胞シート治療の普及に向けた新規作製法の確立
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18K09332
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
谷口 雄一郎 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (30307475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森野 常太郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (00796352)
山本 和央 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (50408449)
葛西 善行 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60813889)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 真珠腫性中耳炎 / 細胞シート / 再生医療 / 細胞培養 / 凍結細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎などの中耳手術において、病的粘膜を除去した後の骨面に自己の鼻粘膜上皮細胞シートを移植して中耳粘膜を再生させることで、これまで限界とされてきた手術成績の向上が期待できるようになってきた。現在多施設共同研究を実施し、細胞加工製品である鼻粘膜上皮細胞シートを安全かつ品質を落とさずに輸送する技術を確立してきた。今後本研究の普及を見据え、毎回患者より組織採取すること無く、必要時に、より短期間で鼻粘膜上皮細胞シートを供給できる細胞培養プロトコールの開発が必要である。本研究では、凍結細胞を用いることで鼻粘膜上皮細胞シートを作製する細胞培養技術を確立し、輸送前後の鼻粘膜上皮細胞シートの品質基準試験を用いることで、移植に供する細胞シートを作製することが可能であるか検証する。我々が現在行っている鼻粘膜上皮細胞シートの製造方法は、初代培養としてエクスプラント培養法を用いて、先に初代培養で細胞数を増加させた後に、温度応答性培養皿に播種して、 細胞シートを作製することで、低侵襲に、安定して移植に供する細胞シート数を確保し、かつ治療効果が得られる上皮細胞シートを作製できる。本研究では本培養技術を生かして、初 代培養後に回収した細胞の一部を凍結保存することで、毎回患者の組織を採取すること無く、 必要時に細胞シートを作製することができるプロトコールの確立を目指す。さらに、実際の 製造を見据え、採取した組織ならびに作製した細胞シートを輸送容器に入れ運搬しても、問題なくシートとしての品質基準を保つことができるか検討する。凍結細胞を用いた細胞培養技術を確立することで、細胞治療による再生医療の臨床応用の普及につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在様々な細胞加工製品が開発され注目されており、我々も自己の体細胞を利用した鼻粘膜上皮細胞シートの移植治療を開発した。自家移植では免疫拒絶はなく、自己細胞の長期培養で腫瘍化したとされる報告もまれであることから、細胞治療としての安全性は高い。現在ヒト臨床研究で確立した輸送技術と品質基準試験を利用することで、本研究技術で作製した鼻粘膜上皮細胞シートが輸送前後においても移植に供する品質を維持できるか検証を行った。まず採取したヒト鼻腔粘膜組織と全血を5時間輸送した。鼻腔粘膜は培養液に入れ4℃で輸送し、全血は24℃で輸送し、遠心分離し血清のみ抽出した。作製したヒト自己血清を用いて、初代培養として約2週間エクスプラント培養を行い、温度変化のみで細胞をシート状に回収することが可能な温度応答性培養皿に細胞を播種した。継代培養を約10日間行い、自己鼻腔粘膜上皮細胞シートを作製し、作製した細胞シートの品質検査として、性状確認、剥離試験、総細胞数、細胞生存率、上皮細胞含有率を評価した。輸送した組織から作製した鼻腔粘膜上皮細胞シートは細胞数、細胞生存率、上皮細胞純度等に影響なく移植基準を満たしていた。作製した細胞シートを5時間以上輸送しても剥脱はなく、通常どおりに回収可能であった。次に凍結鼻粘膜細胞を用いて鼻粘膜上皮細胞シートの作成を行った。通常細胞と同様の手順で自己鼻腔粘膜上皮細胞シートを作製し、作製した細胞シートの品質検査として、性状確認、剥離試験、総細胞数、細胞生存率、上皮細胞含有率を評価した。総細胞数、細胞生存率では通常細胞からの細胞シートに比較してやや劣るものの、性状確認、剥離試験では問題なく移植基準を満たす結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに研究を進め凍結細胞を用いて作製した細胞シートを輸送した後も品質を維持できるか検証する。細胞シートは移植日に合わせて必要に応じて実施できるよう、再手術が必 要となる時期を想定し、2週間後、1ヶ月後、1年後と設定した。 本研究成果をPMDAとのレギュラトリーサイエンス(RS)戦略相談を経て治験にいかす目的に、できる限り異種の生物由来材料を 取り除くよう努力する。これらの最適な条件を決定するために、 細胞シートの目視所見、物理的強度、生細胞数・細胞生存率の確認、操作性、ならびにトランスクリプトーム解析や免疫染色による詳細な解析によって評価する。作製した細胞シートは品質基準試験として、細胞の外観、物理強度の確認、生細胞数・細 胞生存率の確認、上皮系細胞マーカーであるパンサイトケラチンの陽性率、感染症の否定、 エンドトキシン試験を行う。さらに品質基準を満たした細胞シートに関して、輸送容器を利 用した細胞シートの搬送を行う。輸送時間は輸送から移植までの現実的な期間として3日以内と設定し、24時間、48時間、72時間で検討を行う。細胞シートの輸送時における接着状態、 輸送液、温度、時間などの条件を最適化する。さらに輸送後、再度細胞シートの品質基準試 験を行い、移植に供する細胞シートを維持できるか検証する。
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Causes of Carryover |
当初の予定より物品費、旅費が抑えられたため、予定使用額との差が生じた。 来年度は予定していた試薬、抗体、手術器具等の購入を行っていく。
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Research Products
(1 results)