2020 Fiscal Year Research-status Report
pHin the external or mddle ear related a risk factor of middle ear cholesteatoma
Project/Area Number |
18K09356
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
楠 威志 順天堂大学, 医学部, 教授 (30248025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 大 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (40397039)
豊田 優 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 医学教育部医学科, 助教 (80650340)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 耳垢 / 中耳真珠腫 / ABCC11 遺伝子多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
ABCC11遺伝子多型(538G>A)が耳垢の性状(湿性もしくは乾性)を決定することがYoshiuraら(Nat Genet, 38:324-330, 2006)によって報告された。ABCC11 538AAが乾性耳垢に対応し、538GG/GAが湿性耳垢に対応する。耳垢成分は、外耳道アポクリン腺(皮脂腺と耳垢腺)の分泌物と外耳道上皮から成る。これまでに申請者らは、ABCC11遺伝子型に基づく耳垢の乾湿の違いが中耳真珠腫の発生リスクに影響を与える可能性を検討し、中耳真珠腫症例群では、健常群と比べて有意に湿性耳垢の割合が高いことを見出している(P < 0.001)。健常耳のコントロール群63症例中、乾性耳垢(538AA:56例)89.9%、湿性耳垢(538GA:7例)11.1%;中耳真珠腫49症例中、乾性耳垢(538AA:16例)32.7%、湿性耳垢(538GA:31例、538GG:2例)67.3%であった。ABCC11遺伝子の一塩基多型には民族差があり、湿性耳垢に対応する野生型アレル(538G)がアフリカ人、ヨーロッパ人に多く(80-100%)、日本人では少ない(10-30%)ことが知られている。中耳真珠腫罹患率についても人種差に関する同様の傾向が報告されていることを踏まえると、申請者らによって得られた結果は、湿性耳垢は乾性耳垢と比べて耳真珠腫の発症リスクになりやすい可能性を示唆していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中耳真珠腫症例ほか、正常コントロール群の症例も集まり、十分統計処理できる状況になった。その結果をまとめたものが以下の論文に掲載された。 Hara S, Kusunoki T, Nakagawa H, Toyoda Y, Nojiri S, Kamiya K, Furukawa M, Takata Y, Okada H, Anzai T, Matsumoto F, Ikeda K. Association between earwax-determinnat genotypes and acquired middle ear cholesteatoma in a Japanese population. Otolaryngol Head Neck Surg 2021 Mar 16; 1945998211000374. doi: 10.1177/01945998211000374. Online ahead of print. さらに、共同研究で行われているドイツ人症例も集まっている。日独間での中耳真珠腫症例のほか、健常耳コントロール群についてのABCC11遺伝子多型を統計学的に比較もできるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、中耳真珠腫リスクと関連する外耳環境因子のひとつとして、耳垢のpHに着目している。予備的検討ながら、ABCC11遺伝子型に基づき湿性および乾性耳垢を分別し、そのpHを測定したところ、湿性耳垢ではpH 5.40、乾性耳垢ではpH 5.15という結果が得られ、湿性耳垢の方が有意に(P < 0.01)中性寄りであった。以上の結果を糸口として、耳垢を含む外耳道内の環境に着目した申請者らは、「pHの偏り、あるいは、それに伴う細菌叢の変化が中耳真珠腫発症リスクに関与するのではないか」という仮説を設け、研究を進めている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額も少額発生したが、研究費の使用に関して概ね計画通りである。
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