2022 Fiscal Year Research-status Report
pHin the external or mddle ear related a risk factor of middle ear cholesteatoma
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18K09356
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
楠 威志 順天堂大学, 医学部, 教授 (30248025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 大 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (40397039)
豊田 優 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (80650340)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ABCC11遺伝子多型 / 耳垢 / 中耳真珠腫 / 外耳道アポクリン腺 / 外耳道内pH環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
ABCC11遺伝子多型(538G>A)が耳垢の性状(湿性もしくは乾性)を決定することが、Yoshiuraら(Nat Genet, 38: 324~330, 2006)によって報告された。ABCC11 538AAが乾性耳垢に対応し、538GG/GAが湿性耳垢に対応する。耳垢成分は、外耳道アポクリン腺(皮脂腺と耳垢腺)の分泌物と外耳道上皮から成る。これまでに研究代表者らは、ABCC11遺伝子型に基づく耳垢の乾湿の違いが中耳真珠腫の発生リスクに影響を与える可能性を検討し、適宜症例を増やし、中耳真珠腫症例群では、健常群と比べて有意に湿性耳垢の割合が高いことを見出している(P < 0.001)(常耳のコントロール群100症例中、乾性耳垢(538AA:84例)84 %、湿性耳垢(538GA:15 例、583GG:1例)16%;中耳真珠腫67症例中、乾性耳垢(538AA:34例)51%、湿性耳垢(538GA:31例、538GG:2例))49%であった。中耳真珠腫症例群は、コントロール群にくらべ有意に、湿性耳垢の割合が高かった。 ABCC11遺伝子の一塩基多型には民族差があり、湿性耳垢に対応する野生型アレル(538G)がアフリカ人、ヨーロッパ人に多く(80-100%)、日本人では少ない(10-30%)ことが知られている。欧州においては、日本と同レベルの生活・医療水準を有するドイツとの国際共同研究をすでに展開しており、今回(2022年度)、日独間におけるABCC11多型の比較した。ドイツにおいては、コントロール群では、336症例中、乾性耳垢(583AA:17例)5%、湿性耳垢(583GA:100例、583GG:17例)95%であった。中耳真珠腫89症例において、乾性耳垢(538AA:0例)が0%、湿性耳垢(538GA:21例、538GG:68例)は全例100%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍であるが、中耳真珠腫手術件数は回復し、対象となる検体は十分得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者らは、中耳真珠腫リスクと関連する外耳環境因子のひとつとして、耳垢のpHに着目している。予備的検討ながら、ABCC11遺伝子型に基づき湿性および乾性耳垢を分別し、そのpHを測定したところ、湿性耳垢ではpH 5.40、乾性耳垢ではpH 5.15という結果が得られ、湿性耳垢の方が有意に(P < 0.01)中性寄りであった。以上の結果を糸口として、耳垢を含む外耳道内の環境に着目した研究代表者らは、「pHの偏り、あるいは、それに伴う細菌叢の変化が中耳真珠腫発症リスクに関与するのではないか」という仮説を設け、研究を進めている。
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Causes of Carryover |
研究費の使用に関して概ね計画通りであったが、COVID-19感染拡大の影響により学会発表や研究打ち合わせのための出張が見送られたことがあったため、次年度使用額が生じた。今後は積極的に学会へ参加し、成果発表や情報収集を行う予定である。
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