2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a multidisciplinary anti-metastasis treatment against lymph node metastasis of head and neck squamous cell carcinomas
Project/Area Number |
18K09379
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
矢野 元 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (00284414)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | LOXL2 / 頭頸部扁平上皮がん / リンパ節転移 / 細胞外小胞 / 細胞外基質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、頭頚部扁平上皮がんのリンパ節転移をモデルに、複数の標的分子を設定することで効率的ながん転移抑制が可能であることを検証・実証することを目指していた。 本モデルにおいては、ナトリウムイオン / プロトン交換輸送体1 (NHE1) とリジルオキシダーゼ様因子2 (LOXL2) の二つを標的とした。NHE1 はプロトンの細胞外への排出を通じて、腫瘍細胞内部をアルカリ性に、周辺を酸性へと制御し、LOXL2 はその酵素活性 (リジン残基に対するデアミナーゼ活性) を以って、コラーゲンやエラスチンら細胞外基質タンパク質を架橋することで、細胞外基質構造の再構成因子として機能する。それぞれの因子を恒常的 RNA 干渉によって発現抑制した舌がん細胞において、マウス舌に移植して 2 週間後に顎下リンパ節への転移を検出する定量的モデル系において、転移性が減弱していることをすでに見出していた。これに対して両因子のダブルノックダウン細胞においては、そもそも舌への移植における生着の効率が顕著に低下している可能性があることを見出した。 当初本研究は、がん転移における異なる作用点を担う二つの因子を並行して標的とすることで、相加的でより効率の高い転移抑制を実現することを目指した。現在までの結果は腫瘍細胞の非がん組織に対する接着性の減少が生じていることを示しており、このことは腫瘍細胞が標的組織へと移動し得たとしても、これら両因子の抑制によって転移巣における生着も減弱させることができるであろうことを強く示唆する。 現在はこのことを定量的・統計学的に示すための作業を継続している一方、接着・生着性が減弱するメカニズムについての解析を展開している。仮説として、腫瘍細胞の組織への接着においてリジルオキシダーゼによる細胞外基質の再構成が必要であり、その酵素活性に NHE1 によって供給される酸性環境が必須である、というものである。
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