2019 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺腫瘍自然発生モデルマウスの確立とそのメカニズムの解明
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18K09382
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
折舘 伸彦 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (90312355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蓮見 壽史 横浜市立大学, 医学部, 助教 (40749876)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 唾液腺腫瘍 / Birt-Hogg-Dube症候群 / FLCN遺伝子 / ミトコンドリア / mTOR / TFE3 |
Outline of Annual Research Achievements |
FLCNは、ミトコンドリアの酸化的代謝やオートファジーなど、さまざまな代謝経路の調節を通じてエネルギーの恒常性を制御する腫瘍抑制遺伝子である。 FLCN遺伝子の生殖細胞系列の変化によって引き起こされるBirt-Hogg-Dube(BHD)症候群は、腎癌、皮膚線維毛包腫、肺嚢胞、および唾液腺腫瘍の発症素因となる。まず本研究の第一段階として、唾液腺におけるFLCNの代謝的役割とその臨床的関連性について検討した。超音波検査によるBHD患者の唾液腺スクリーニングでは、唾液腺での嚢胞形成が増加することがを示された。 BHD患者で発生した唾液腺腫瘍は、FLCN欠損細胞の特徴である、mTOR-S6R経路の活性化とGPNMB発現の増加が示された。唾液腺をターゲットにしたFlcnノックアウトマウスは、ミトコンドリア生合成の増加、mTOR-S6K経路の活性化、TFE3-GPNMBの発現増加、脂質代謝経路の活性化を伴う導管細胞細胞質の明細胞形成をきたした。 LC / MSとGC / MSによるプロテオミクスと代謝産物の分析により、唾液腺でのFlcn不活性化がペントースリン酸経路への代謝リプログラミングを引き起こし、その結果、ヌクレオチド合成とレドックス制御が活性化され、Flcnが唾液腺での代謝ホメオスタシスを制御することがさらに裏付けられた。これらのデータは、唾液腺におけるFLCNの重要な役割を明らかにした。 FLCN欠損下での代謝リプログラミングはヌクレオチド産生を増加させ、FLCN欠乏唾液腺組織における腫瘍を発生・促進させた。これらから唾液腺腫瘍形成の機序に関する考察と唾液腺腫瘍の新規治療法の開発への道を開いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
唾液腺特異的FLCNノックアウトマウスの作製については、 コンディショナルノックアウトの作製が必要であった。コンディショナルノックアウト(条件特異的遺伝子破壊)とは、標的となる遺伝子領域をCreリコンビナーゼ標的配列loxPで挟んだ遺伝子座を持つマウス(floxマウス:fと表記)と、組織特異的にCreリコンビナーゼを発現しているマウスとかけ合せることで、特定の臓器の細胞のみで標的遺伝子の破壊を起こすことができる手法で、これにより致死性遺伝子の解析が可能となる。研究代表者は、分担者よりFLCN遺伝子コンディショナルノックアウトマウスを既に受領し、さらに米国立衛生研究所が作製した唾液腺特異的にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスMMTV-Creを受領した。FLCN遺伝子コンディショナルノックアウトマウス(FLCN f/f 、FNIP1 f/f & FNIP2 f/f)と唾液腺特異的にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスMMTV-Creを交配し、唾液腺特異的FLCNノックアウトマウスの作製を行った。 さらに唾液腺特異的FLCNノックアウトマウスの唾液腺腫瘍の組織学的検討としてノックアウトマウスの唾液腺を週齢8週で摘出、標本を作製、ヘマトキシリン・エオシン染色し評価した。染色後、対照群と唾液腺の形態学的変化を光学顕微鏡で比較した。また、過去の報告で、FLCNミトコンドリア代謝との関与が示唆されており、透過型電子顕微鏡を用いてミトコンドリアの形態・数を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
唾液腺特異的FLCNノックアウトマウスにつづいて、FNIP1ノックアウトマウス、FNIP2ノックアウトマウスと、MMTV-Creトランスジェニックマウスの交配から、唾液腺特異的FNIP1/FNIP2ノックアウトマウスを作製し、唾液腺特異的FNIP1/FNIP2ノックアウトマウスの唾液腺を週齢8週で摘出、標本を作製、ヘマトキシリン・エオシン染色し評価する。染色後、対照群と唾液腺の形態学的変化を光学顕微鏡で比較する。また、FNIP1/FNIP2はミトコンドリア代謝との関与が示唆されているので、透過型電子顕微鏡を用いてミトコンドリアの形態・数を評価する。組織学的検討に十分量の検体が得られた後は、以降に行う細胞内シグナル伝達系の同定のための検体として、唾液腺を摘出し液体窒素で凍結保存しておく。8週齢以前に著明な唾液腺の腫脹もしくは唾液腺機能低下にともなう摂食障害による体重増加不良を認めるようであれば、8週齢以前の摘出を検討する。反対に、8週齢で十分な組織学的変化を得られない場合は8週齢以降の摘出を検討する。
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Causes of Carryover |
FNIP1ノックアウトマウス、FNIP2ノックアウトマウスと、MMTV-Creトランスジェニックマウスの交配から、唾液腺特異的FNIP1/FNIP2ノックアウトマウスを作製中であるが、目的とするジェノタイプ、つまり唾液腺特異的FNIP1/FNIP2ノックアウトマウスが得られる確率はそれぞれ1/4または1/8であるため、唾液腺腫瘍の組織学的検討、唾液腺におけるFNIP1/FNIP2の発現解析に必要な検体数を確保するために時間を要している.今後の検討に必要な唾液腺特異的FNIP1/FNIP2ノックアウトマウスが確保できれば,前年度余った金額あわせて,唾液腺特異的ノックアウトマウスの唾液腺腫瘍の組織学的検討を行う.具体的には,唾液腺を週齢8週で摘出、標本を作製、ヘマトキシリン・エオシン染色し評価する.染色後、対照群と唾液腺の形態 学的変化を光学顕微鏡で比較する.
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] FLCN Alteration Drives Metabolic Reprogramming Towards Nucleotide Synthesis and Cyst Formation in Salivary Gland2020
Author(s)
Isono Y, Furuya M, Kuwahara T, Sano D, Suzuki K, Jikuya R, Mitome T, Otake S, Kawahara T, Ito Y, Muraoka K, Nakaigawa N, Kimura Y, Baba M, Nagahama K, Takahata H, Saito I, Schmidt LS, Linehan WM, Kodama T, Yao M, Oridate N, Hasumi H.
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Journal Title
Biochem Biophys Res Commun
Volume: 522
Pages: 931-938
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research