2020 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of molecular mechanisms of middle ear cholesteatoma by the analysis of gene network involving bone destruction
Project/Area Number |
18K09388
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
春山 琢男 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (80549270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 正幸 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (20359524)
楠 威志 順天堂大学, 医学部, 教授 (30248025)
池田 勝久 順天堂大学, 医学部, 教授 (70159614)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨破壊 / 真珠腫性中耳炎 / 表皮細胞 / 線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
真珠腫の表皮細胞と線維芽細胞の培養法の確立 本研究では真珠腫の骨破壊機序に重要なサイトカイン・キモカインの産生母地である構成 細胞(表皮細胞と線維芽細胞)を用いて、短期間で解析できる分離培養系を確立することに より、個々の患者の生体組織に近いin vitro評価系を確立する。既に、我々の先行研究 (Homma et al., Act Otolaryngol 2014; Shiozawa at al., Rhinology 2015)においては、鼻ポリープ組織より簡便に上皮細胞と線維芽細胞の検体分離、培養に成功し、同細胞が凍結保存により生体機能を保存した状態で実験を行えることを確認した。この実験技術を真珠腫組織 培養に応用した。摘出された真珠腫から表皮細胞と線維芽細胞を分離し、各々を純化培養した。培養された表皮細胞と線維芽細胞の真珠腫に特異的な生物学的な特性を確認するために、IL-17を添加して表皮細胞から分泌されるフィラグリン量と線維芽細胞から分泌される RANKL量を測定する。以上から、真珠腫を用いたin-vitroでの培養実験系を構築した。 遺伝子発現ネットワークのプロファイル評価法の確立真珠腫から培養された上皮細胞と線維芽細胞の培養系を確立構成細胞系では上皮細胞と線維芽細胞に分離し、各々を純化培養した。IL-17を培養系に非添加または添加し、細胞から 核酸分子を抽出し、デジタルオミックスアナライザーによってPCR増幅なしに、800以上の炎症性・免疫性の関連遺伝子の挙動を短時間で正確かつ再現性をもってマルチプレックス解析して、多数の遺伝子が連動して複雑なネットワークを形成している遺伝子発現のプロファイルを作成した。IL-17非添加群と添加群から得られた遺伝子発現のプロファイルを遺伝子発現変異分析法によって解析し、関連する特異的遺伝子の発現プロファイルを決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
真珠腫の表皮細胞と線維芽細胞の培養法を確立した。手術時採取した上皮下肉芽組織を含む真珠腫組織を細切した。摘出検体の酵素処理 Ca free MEMをバッファーとし、MEM with DNAase and proteaseを用いた酵素処理時間・濃度による最適条件の検討を行った。細胞の抽出:酵素処理後の検体を撹拌し遠心(1000rpm×5min)し、上清を抽出後再び遠 心(1000rpm×5min)し上清を吸引しMEMを加えた。培地としてFBS/DMEMに表皮細胞と線維芽細胞を細胞特異的な成長因子を用いて純化培養を行い、培地濃度、検体濃度及び培養期間の検討を行った。 真珠腫の表皮細胞と線維芽細胞のプロファイリング IL-17付加の後、培養24および72時間後に培地を交換し0-24hr,24-72hr,72-120hrの各培養上清から、表皮細胞ではフィラグリン量を、また線維芽細胞ではRANKL量濃度を測定した (ELISA法)。 今後は、真珠腫から培養された確立構成細胞から表皮細胞と線維芽細胞を分離し、各々を純化培養する。IL-17を培養系に非添加または添加し、細胞から核酸分子を抽出し、デジタルオミックスアナライザーによって PCR 増幅なしに、800 以上の炎症性・免疫性の関連遺伝子の挙動を短時間で正確かつ再現性をもってマルチプレックス解析して、多数の遺伝子が連動して複雑なネットワークを形成している遺伝子発現のプロファイルを作成する。IL-17 非添加群と添加群から得られた遺伝子発現のプロファイルを遺伝子発現変異分析法によって解析し、関連する特異的遺伝子の発現プロファイルを同定する。
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Strategy for Future Research Activity |
中耳真珠腫の発症は全国で年間 3,500-4,000 症例と推察されている。現在、真珠腫性中耳炎の治療の中心は手術であるが、本研究の成果によって新規の薬物治療を併用することによって骨破壊を未然に防ぎ、顔面神経麻痺、めまい、難聴、髄膜炎などの重篤な合併症を回避させることは、患者救済に著しく貢献する。この課題に対して、真珠腫性中耳炎の骨破壊の免疫学的分子機構の分子レベルで解明し、治療戦略に新たな分子基盤を提供することができることが本研究の独創的かつ高い学術的特色である。既に、リウマチにおいては TNF-α阻害により患者の関節炎抑制とともに骨破壊が抑制されることが報告されてきている。今回の研究によって、真珠腫の骨破壊に関するターゲット遺伝子を解明することによって新規の創薬の開発に結び付き、手術を回避して保存的な治療が可能となり、臨床的に極めて意義深い研究となる。
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Causes of Carryover |
以下の実験を本年度に施行予定であったが、いまだ十分ではないため、次年度にこれらの実験に必要な使用額を計上した。 摘出された真珠腫から表皮細胞と線維芽細胞を分離し、各々を純化培養する。培養された表皮細胞と線維芽細胞の真珠腫に特異的な生物学的な特性を確認するために、IL-17を添加して線維芽細胞から分泌されるRANKL量を測定する。
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