2019 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病網膜症における不飽和アルデヒドアクロレインの網膜グリア細胞活性化機構
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18K09393
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野田 航介 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (90296666)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 糖尿病網膜症 / 不飽和アルデヒド / 網膜グリア細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病網膜症は重篤な視機能障害をきたす疾患であり、その病態理解は眼科学における重要課題である。不飽和アルデヒドの一種アクロレインは反応性が高く、さまざまな蛋白と結合することでその機能異常を惹起するため、神経変性疾患や悪性腫瘍など様々な疾患病態で注目されている分子である。 昨年度の検討では、培養ラット網膜グリア細胞TR-MUL5にアクロレインを負荷し、遺伝子発現の変化をin vitro実験系で検討したところ、発現が亢進する遺伝子として創傷治癒や細胞遊走に関与するケモカインCXCL1および抗酸化ストレスに関与する酵素heme oxygenase-1 (HO-1)が検出された。そこで、今年度は前者の炎症性ケモカインCXCL1に着目し、検討を行った。その結果、1)アクロレインは網膜グリア細胞の遊走能を亢進すること、2)アクロレインによるCXCL1増加は酸化ストレス亢進を介すること、3)CXCL1も同様に網膜グリア細胞の遊走能を亢進すること、4)CXCL1およびその受容体CXCR2に対する阻害剤はアクロレインによる網膜グリア細胞遊走亢進を抑制すること、などが明らかとなった。これらのことは、アクロレインがその下流で細胞遊走に関与するケモカインCXCL1の発現亢進を引き起こし、網膜グリア細胞の遊走に寄与することを示していた。 網膜症の病態形成には網膜グリア細胞の遊走が重要な役割を演じることが知られていたが、その詳細な機序は現在まで不明であった。本研究は、そのメカニズムの一端を明らかとするものであり、今後創薬研究などに有益な情報であると考えられる。なお、本検討内容は学術誌Invest Ophthalmol Vis Sci. ;60:4425-4435, 2019に受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の検討内容に基づいて、アクロレインが有する網膜グリア細胞遊走に対する遊走亢進作用の一つを明らかとすることができたことから、順調に研究は進展していると自己評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、CXCL1以外のもう一つの候補分子HO-1に着目した研究をおこなう予定である。HO-1は元来、抗酸化作用などから保護的な因子と考えられているが、糖尿病網膜症病態におけるその関与について検討する。
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Causes of Carryover |
理由:今年度の研究計画は自然発症2型糖尿病モデルを用いたin vivo実験の予定であったが、昨年度の検討で明らかとなったグリア細胞遊走に関する分子CXCL1についての解析をin vitro実験を用いて先行させたため、予定よりも低額の研究費使用となったため。 使用計画:次年度使用額を合算した研究費で、もう一つの対象分子HO-1に関するin vitro実験と動物モデルを用いた検討に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)