2019 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞3次元網膜組織培養を用いた老化によるミトコンドリア障害の解析
Project/Area Number |
18K09423
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
尾里 納美 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (60547454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 洋子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90265885)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | iPS細胞 / ミトコンドリア / 網膜 / DNA二本鎖切断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タモキシフェン(TM)によってDNA二本鎖切断(DSB)を誘発可能なマウスiPS細胞から分化誘導した3次元網組織(網膜オルガノイド)にDSBを人為的に誘発し、網膜神経組織における老化とDSBの関連を分子レベルで解析することを目的としている。 このマウスiPS細胞においてTMの添加でDSBを誘発する条件を探索した。DSBが誘発された細胞の確認は、抗GFP・HA抗体による蛍光染色像とDNAを抽出しq-PCRで確認した。マウスiPS細胞では、TMの添加によってDSBが誘発されたが、その割合は非常に低かった。 マウスiPS細胞を三次元網膜誘導条件で培養し、凸型に細胞が配列する層状構造のオルガノイドを分化誘導した。形成された細胞層が視細胞であるか、オルガノイドで切片を作成し抗ロドプシン抗体による蛍光染色で確かめた。オルガノイドは分化誘導開始から、層状構造になるにつれて平滑な表面(凸面がつるりとしている)になる。しかし、その平滑さは25日を過ぎる頃から崩れ始めた。分化初~中期でTMを添加したオルガノイドでは分化が途中で停止した。後期での添加は、平滑な表面の崩れ始めるのを早める傾向があった。 オルガノイドの切片では、抗ロドプシン抗体で標識される細胞数や、Tom20などで標識したミトコンドリアの分布などにTM処理の有無における顕著な差は見られなかった。しかしながら、TM処理したオルガノイドでも、抗GFP・HA抗体で標識されなかったので、実際、オルガノイドのどの細胞で全体の何割でDSBが誘発されたのか染色像から判断することはできなかった。 今後は、TM処理の有無によるオルガノイド間での解析だけでなく、一つのオルガノイド内でDSBが誘発された細胞とされなかった細胞を区別し解析をすることで、組織老化だけでなく、個々の細胞老化による組織全体への影響も解析できる方法の確立が必要である。
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