2019 Fiscal Year Research-status Report
Basement membrane dynamics in the development of retinal blood vessels
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18K09429
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
二木 杉子 大阪医科大学, 医学部, 助教 (00403014)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 基底膜 / MMP / 血管新生 / 網膜 / 未熟児網膜症 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までにマウス新生仔網膜における血管新生を解析し、基底膜蛋白質およびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)-9, -14の発現・局在を明らかにした。2019年度は未熟児網膜症のマウスモデルを導入し、病的な血管形成における血管基底膜の形態変化、基底膜蛋白質の局在、MMP-9, -14の局在について検討した。 未熟児網膜症モデルマウス(oxygen-induced retinopathy; OIRマウス)の作製は既報に従い、生後5日目の新生仔を高酸素(約75%)環境下で7日間生育させ、通常酸素(約20%)環境でさらに7日間飼育した。これらのマウスでは、高酸素暴露後に網膜中心領域の血管が大幅に消失し、通常酸素に戻した後には網膜辺縁部の血管の異常な拡張・蛇行などが観察された。Whole-mount蛍光免疫染色による観察では、これらの異常な血管網も基底膜を有しており、代表的な基底膜蛋白質の局在についても正常血管と顕著な差はないことが示された。MMP-9, -14の発現・局在については、正常網膜では生後14日目までに血管周辺で検出されなくなった。OIRマウス網膜においてもMMP-9, -14の染色は認められなかった。OIRにおける病的な血管出芽部と見られる部位についても同様に観察したが、新生仔期の生理的な血管伸長先端と比較して血管基底膜の異常やMMPの局在などは認められなかった。さらに高酸素暴露による血管退縮期の網膜を用いた免疫染色においても、特異的なMMP-9, -14の染色シグナルは認められなかった。これらの結果からOIRマウスにおける異常な血管退縮・新生にはMMP-9, -14の関与は低いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた未熟児網膜症モデルマウス作製の実験系を導入し、新生仔における網膜血管網の大規模な消失に続く異常血管形成が確認できた。この系を用いて、血管基底膜および基底膜分解に関わることが予想されるMMP-9, -14の局在を、血管消失・異常新生のそれぞれの段階において解析した。その結果、OIR網膜の血管退縮・新生には顕著な基底膜の異常やMMPsの集積は見られなかった。一方、高酸素暴露したOIRマウスでは体重増加に若干の遅れが見られることも判明したため、血管の発達への影響などについてさらなる精査は必要と考えられる。 また、基底膜イメージングモデルマウス(Nid1-mCherry)を用いた網膜血管基底膜ライブイメージングの条件検討を行った。Nid1-mCherryの新生仔では網膜血管基底膜への蛍光標識が弱いため、ライブイメージングには適さなかったが、2週齢の網膜では血管基底膜のex vivoライブ観察が可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
基底膜イメージングモデルマウス(Nid1-mCherry)を用いて、網膜血管基底膜の動態を解析する。具体的には、培養下のNid1-mCherry網膜を用いて蛍光標識された血管基底膜の一部をレーザー照射によって褪色させる。その後の培養下で褪色部の蛍光回復を測定することで、蛍光基底膜蛋白質の基底膜部への集積効率等を定量的に評価する。培養環境下でMMPsの阻害剤等を添加することにより、基底膜への構成蛋白質の集積におけるMMPsの関与等を検討する。
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Causes of Carryover |
動物実験施設の建物上の制約により、未熟児網膜症モデルマウスの実験回数が予定より限られたため、次年度使用額が生じた。次年度は未熟児網膜症モデルマウス作製・解析のための物品(消耗品)費として使用する。
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