2018 Fiscal Year Research-status Report
風疹ウイルス関連ぶどう膜炎の頻度と病態に関する研究
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18K09440
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
高瀬 博 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (20451940)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ぶどう膜炎 / 風疹ウイルス / 抗体率 / 眼内液検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、原因不明またはステロイド抵抗性の硝子体混濁における、風疹ウイルスのぶどう膜炎への関与を調べることを目的に、硝子体生検における風疹ウイルスの抗体率を検討した。 硝子体混濁に対して診断的治療目的に硝子体手術を施行し、風疹ウイルス抗体率を測定した30例30眼(男:女=17:13、平均年齢61歳)を対象として、研究を行なった。抗体率は、同日に採取した硝子体液と血清それぞれにおける風疹ウイルス特異的IgG抗体価と全IgG抗体価から算出し、2以上を陽性、2未満を陰性と定義した。硝子体液に対する各種検査結果、抗体率、最終診断を、診療録をもとに後方視的に解析した。統計解析にはMann-Whitney U検定を用いた。 硝子体生検結果と全身検査結果、およびその後の経過から、7例(23%)が眼内リンパ腫、2例がサルコイドーシス、1例が結核と確定診断された。一方、20例はいずれの検査でも特定の診断に至らず、分類不能症例とした。しかし、風疹ウイルス抗体率の結果は、分類不能症例の8例で陽性となり、全症例中27%、分類不能症例中40%を占めた。眼内リンパ腫などの、原因診断に至った症例で風疹ウイルス抗体率が陽性となった症例は無かった。風疹ウイルス陽性例と陰性例を比較すると、陽性例は陰性例と比べ有意に若く(平均年齢34歳 対 77歳、p=0.0005)、性別は男性が多かった(88% 対 45%)。 このため、原因不明のぶどう膜炎症例の中で、最終的に分類不能症例となるもののうち40%が風疹抗体率陽性となる事が明らかとなった。また、これらの症例は、若年患者、特に男性に多いという特徴を有していた。 これらの研究結果より、風疹がある一群のぶどう膜炎の病態に関与している事が強く示唆された。今後、その臨床病態の解析および眼内液検体を用いた分子生物学的解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、これまでの症例の蓄積もあり、順調な症例数の蓄積を行う事ができた。また、その結果、本研究の目的の一つである風疹関連ぶどう膜炎の存在を明らかにする事に、大きく近づく結果を得る事ができた。すなわち、既存の診断基準や検査項目では分類不能とせざるを得なかった症例における高い割合が風疹抗体率陽性だった事、これらの陽性患者が陰性患者と比べて若年男性に多いという強い傾向を示した事などから、風疹がぶどう膜炎の発症に具体的に関与している可能性が強く示唆されたものと考えられる。本研究の初年度の研究成果としては、順調な進展と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度終了までの時点で、原因不明の硝子体混濁症例30例に対して硝子体生検を施行し、うち8例で風疹抗体率陽性となった。今後、風疹抗体率測定を含めた硝子体生検症例を蓄積するとともに、既に生検施行済みの症例に対しては、風疹関連ぶどう膜炎の疾患概念を確立する事を目標として、風疹抗体率陽性患者の臨床病態の解析を行うと同時に、硝子体液検体に対する分子生物学的手法を用いた解析を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は主に臨床検体の診断目的の解析を行った。しかし、検体に対する分子生物学的解析に至らなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、検体の分子生物学的解析のためにPCR用試薬、サイトカイン測定のためのELISA試薬、これらを扱うためのマイクロピペットの購入やチップ、チューブ類など、実験用消耗品の購入が今年度分も含めて多く発生する見込みである。
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Research Products
(2 results)