2019 Fiscal Year Research-status Report
風疹ウイルス関連ぶどう膜炎の頻度と病態に関する研究
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18K09440
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
高瀬 博 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (20451940)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ぶどう膜炎 / 風疹ウイルス / 抗体率 / 眼内液検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に集積した風疹ウイルス抗体率陽性患者の臨床像の解析と、硝子体検体に対する病理学的、分子学的検討を行った。また、前年度に引き続き原因不明またはステロイド抵抗性の硝子体混濁における、風疹ウイルスのぶどう膜炎への関与を調べることを目的に、硝子体生検における風疹ウイルスの抗体率を検討を継続した。 風疹抗体率陽性となった患者は9例で、男性8例女性1例、年齢は平均45歳(29歳~62歳)と中高年の男性に多い傾向を示していた。風疹の罹患歴、風疹ワクチン摂取歴などに関する詳細は不明だった。罹患眼は全例が片眼性であり、6眼(67%)で豚脂様角膜後面沈着物が認められた。隅角に結節や周辺虹彩前癒着などはなく、フックス虹彩異色性虹彩毛様体炎の特徴的所見である虹彩異色は2眼(22%)に認められた。水晶体は7眼が白内障に罹患しており2眼は既に眼内レンズ挿入眼となっていた。本対象患者は全て硝子体混濁が存在していたが、その硝子体混濁グレードは1が5眼(56%)、2が3眼(33%)、3が1眼(11%)だった。眼底病変は1眼(11%)で網膜静脈周囲炎が認められるのみだった。続発緑内障は6眼(67%)で生じていた。 これらの患者の硝子体液を解析したところ、病理細胞診断ではクラス3と分類されたものが4眼(44%)あり、異形細胞との鑑別が困難な症例が半数近くを占めた。免疫グロブリン遺伝子再構成を検出するPCRでは、8例で陰性(1例は未検)だった。ヒトヘルペスウイルス、トキソプラズマ原虫などぶどう膜炎の原因として多く検出される病原微生物を標的としたPCRは、いずれも陰性だった。 これらの研究結果は、風疹関連ぶどう膜炎の病態と眼内液の特徴を明らかにするものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで集積された風疹抗体率陽性患者の臨床像、及び眼内液の解析は順調に進行している。しかし、追加症例の集積ペースが予想より遅く、今後さらなる症例の集積を期待しているが、研究及び診療活動の制限という現状を鑑み、万が一症例集積が困難な場合は、現状の症例数で研究を遂行していく方針とする。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに風疹抗体率陽性となる硝子体患者の一群の存在を明らかにし、その臨床的特徴及び眼内液の解析結果に一定の傾向を見出す事ができている。今後さらなる症例の集積により上記知見をより確かなものとすることを目標とする。一方、抗体率測定には眼内検体としては多量の生態資料を必要とするため、患者集積に限界がある。風疹ウイルスはRNAウイルスであり、臨床的にPCR法による検出感度は通常のDNAウイルスに比較して低い事が本研究で抗体率を用いている理由であるが、本研究で集積した検体を用いて改めてPCR法による風疹ウイルスの検出感度を高める手段について検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
解析対象とする臨床検体数が予想より少なく、物品費が少ない結果となった。一方、すでに収集した検体解析に対しては主に解析担当者への人件費に用いた。次年度は引き続き臨床検体の解析及びPCR等の消耗品の購入、人件費を見込んでいる。
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Research Products
(5 results)