2019 Fiscal Year Research-status Report
房水産生のメカニズムにおけるアクアポリンの役割―緑内障治療剤の開発を目指して―
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18K09441
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
植木 智志 新潟大学, 脳研究所, 助教 (90595117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Huber Vincent 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (40422620) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アクアポリン / 眼圧 / 房水 / pos-iridial flow |
Outline of Annual Research Achievements |
生体において細胞内外および組織内外の水の移動に重要な役割を持つアクアポリンは、眼球の房水産生の主座である毛様体上皮層に存在しているが、その役割については解明されていない。本研究の目的は、アクアポリンの房水産生における役割を、アクアポリン4阻害剤投与マウスの生理学的変化を解析することで解明することであり、アクアポリンを新たな治療ターゲットとする臨床に直接つながることが期待できる。実験に用いるアクアポリン4阻害剤は当教室で開発されたもので、すでにヒトにPET製剤として用いられており生体に安全に投与可能である。 昨年度は研究計画書に記載した予定通り、DBA2Jマウスにおけるアクアポリン4阻害剤の全身投与による眼圧下降効果の解析を行った。DBA2Jマウスは加齢に伴い眼圧上昇をきたす自然発症の緑内障モデルマウスで、DBA2Jマウスでは房水流出路の障害が起こるとされており、房水産生を評価するのに適している。1.5%イソフルレンによる吸入麻酔下にDBA2Jマウスの眼圧をicare TONOLABにより薬剤投与前および薬剤投与20分毎に120分後まで測定した。 今年度は、昨年度の問題点として浮上したイソフルレン吸入麻酔による眼圧下降効果により薬剤の眼圧下降効果がマスクされている可能性を克服するために、既報を参考にハンドリングを十分に行うことによる無麻酔下のマウスの眼圧測定を行った。また、アクアポリン4は毛様体上皮層のみならず網膜のミュラー細胞にも分布している。毛様体上皮層で産生された房水の大部分は前房に至り隅角から流出するが、post-iridial flowと呼ばれる硝子体腔を経由し網膜を通るとされている経路も存在する。この経路にアクアポリン4が関与している可能性を考え、当教室で開発された脳内の水動態を生体で評価できるJJVCPE MRIの眼球後眼部への応用も並列的に行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Post-iridial flowと呼ばれる硝子体腔を経由し網膜を通るとされている経路にアクアポリン4が関与している可能性を考え、当教室で開発された脳内の水動態を生体で評価できるJJVCPE MRIの眼球後眼部への応用を試み、マウスの大腿静脈から注入したH2(17)Oの眼球後眼部への流入を評価できることを明らかにした。これまで生体において眼球後眼部の水動態を評価する方法は硝子体腔に色素を注入する方法などに限定されていたが、JJVCPE MRIの眼球後眼部への応用により、後眼部の水動態の理解が今後飛躍的に進展することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
JJVCPE MRIの眼球後眼部への応用が可能になったことから、post-iridial flowにアクアポリン4が関与している可能性を解明するために、さらに研究を押し進める。具体的にはアクアポリン4ノックアウトマウスとそのリッターメイトに実験を行い比較する。また、無麻酔下の眼圧測定をさらに行い、アクアポリン4阻害剤と、Na-K ATPase阻害剤、炭酸脱水酵素阻害剤との併用効果について解析する。 研究計画調書に記載した予定通り、DBA2Jマウスの網膜神経節細胞死の評価も行う。
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Causes of Carryover |
研究計画調書に記載した物品などを購入したが、わずかな残額が次年度使用額となった。令和2年度はあらかじめ請求した助成金と最終年度使用額を合わせて、薬剤や物品などの購入、学会発表・論文発表などにかかる経費に使用する予定である。
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