2021 Fiscal Year Research-status Report
水素ガス吸入による網膜虚血再灌流障害抑制効果の検討
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18K09442
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
林 篤志 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (20283773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柚木 達也 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (30401805)
宮腰 晃央 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (10624926)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 虚血再灌流 / 網膜 / 水素ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
当初マウスを用いて網膜虚血再灌流障害もモデルを作成できるよう試行錯誤を繰り返していたが、マウスは眼球が小さいこともあり、なかなか安定して網膜障害モデルを作成することが困難であった。そのため動物をラットに変更し、施行錯誤を行ったところ、網膜虚血再灌流障害モデルを安定して作成できた。再灌流後2日、4日、7日で網膜障害を組織切片で確認したところ、4日から7日後で明らかな網膜障害を確認した。また、モデル作成には、虚血作成時間中に十分な麻酔が必要である。当初計画の薬剤では、途中で麻酔が浅くなることでモデル作成に支障をきたしていたが、麻酔薬を変更して1時間以上安定してモデル作成ができるようになった。ラットで網膜虚血再灌流モデルを作成後7日で眼球を摘出し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン切片を作成し、組織学的に検討した結果、網膜全 層にわたる変性所見とGFAPの免疫染色で強陽性を認めた。さらにラットでの虚血再灌流作成時に2%水素吸入を併用すると明らかに再灌流後7日目での網膜菲薄化が有意に減少していることを確認できた。 2%水素ガス吸入による網膜虚血再灌流障害の抑制のメカニズムを検討するため、網羅的にサイトカインのタンパク発現を検討できるキットを用いたところ、水素ガス吸入がない場合は、MCP-1とTIMP-3が著明に増加していたが、水素ガス吸入でこれら2つのサイトカインの上昇が抑えられたことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初はマウスを用いて網膜虚血再灌流障害モデルを作成するように努力していたが、種々方法を変えて検討してもなかなかきれいなモデルを作成するのが困 難であった。そこで、モデル動物をラットに変更した結果、ラットを用いた網膜の虚血再灌流障害モデルを安定して作成することができた。網膜障害モデルの確 認は、すべて組織切片を作成して行うため、毎回の方法変更に伴うモデル作成のチェックには時間を要した。その結果、1年以上の時間をモデル作成と確立に要 した。今年度はラットを用いて水素ガス吸入の網膜虚血再灌流障害モデルを用いて、2%水素ガス吸入により、ラット網膜の虚血再灌流障害によって生じる網膜変性および網膜菲薄化が抑制されることが証明された。さらにサイトカインの網羅的検索により、虚血再灌流障害により誘導されるMCP-1とTIMP-3の上昇が、水素ガス吸入により有意に減少することが示された。以上よりおおむね順調に進展したと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットの網膜の虚血再灌流障害モデルを用いて2%水素吸入による効果を組織学的、生化学的に非吸入群と比較検討し、水素ガスによる網膜保護作用のメカニズムを検討していく。 網膜虚血再灌流障害作製時に2%水素ガス吸入を併用した場合、MCP-1とTIMP-3の上昇が有意に抑制されたことから、これらの因子が水素ガスの網膜保護作用に関係していると考えられる。さらにサイトカインの変化を調べ、遺伝子発現レベルでの検討も行っていく。今後さらに結果を集め、学会発表と論文作成を進めていく。
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