2022 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病誘引の慢性炎症による角膜幹細胞と神経への影響-マクロファージの動態に着目-
Project/Area Number |
18K09463
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
上野 宏樹 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (30529897)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 聰樹 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 名誉教授 (20109010)
服部 貴明 東京医科大学, 医学部, 兼任講師 (20408173)
鈴木 登 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (40235982)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 糖尿病 / 慢性炎症 / 角膜三叉神経 / 角膜幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は糖尿病の状況により誘引された慢性炎症は角膜三叉神経と角膜幹細胞に対して阻害因子であるという仮説のもとに、糖尿病モデルマウスを用いて重症糖尿病を仮想し、慢性炎症反応誘導時のケモカイン、炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカインの経時的評価、更に角膜幹細胞、角膜三叉神経に対する影響を検討することである。まず高血糖状態の安定した重症化モデル作成のため糖尿病マウスに高脂肪含有飼料で飼育したところ、血糖値が正常マウス群は136.5±13.2mg/dLに対して、糖尿病モデルマウス群は565.0±39.5mg/dLであった。また平均的血糖状態を反映するHbA1c値においても正常マウス群は4.1±0.3mg/dLに対して、糖尿病モデルマウス群は9.8±0.6mg/dLであった。 糖尿病モデルマウス群と比較して糖尿病モデルマウスにliposomal clodronate結膜下注射を施行した群は神経のマーカーであるβIII tubulinの発現が正常マウス群と似た角膜上皮下神経叢の所見を示した。一方糖尿病マウスにliposomal clodronate結膜下注射を施行した群の炎症性サイトカインのmRNA定量をReal Time PCRにて測定したが、炎症性サイトカインであるTumor Necrosis Factor α (TNF-α) やInterferon γ (IFN-γ) には糖尿病マウスと比較して変化を及ぼしていなかった。 以上のことから重症2型糖尿病に対して糖尿病角膜障害をきたした際、マクロファージ枯渇薬を用いることで三叉神経支配である角膜上皮下神経叢障害保護の可能性を示唆した。これはliposomal clodronateがマクロファージ枯渇作用のみでなく細胞内でATP類似体としてATP代謝を阻害する事を踏まえると、ATP経路を介した慢性疼痛発症メカニズムの関与が考察される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
重症糖尿病による慢性炎症が角膜三叉神経と角膜幹細胞に影響を及ぼすと仮説を立て研究を現在すすめているが、in vivo実験で一部のサイトカインに変動がみられ、in vitro実験にてその鍵となるサイトカインと神経保護因子の関連性の立証に引き続き時間を割いている状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
糖尿病モデルマウス群と比較して糖尿病モデルマウスにマクロファージを枯渇するliposomal clodronate(クロドロン酸)結膜下注射を施行した群はβIII tubulinの発現が正常マウス群と似た角膜上皮下神経叢の所見であり神経保護の可能性を示した。以上を踏まえ、重症糖尿病誘引の慢性炎症環境時におけるサイトカインと神経関連因子の相関性を詳細にすることで角膜神経保護のメカニズムの解明を目標とする。
|
Causes of Carryover |
重症糖尿病による慢性炎症が角膜三叉神経と角膜幹細胞に影響を及ぼすと仮説を立て研究を進めており、in vivo実験で三叉神経支配である角膜上皮下神経叢障害保護の誘因となった神経炎症因子のより詳細なメカニズムを究明している。in vivo実験で鍵となるサイトカインに焦点を当てることが漸くできたが、関与する因子もしくは上流因子の立証のため次年度の使用が生じた理由である。in vitro実験を用いて更なる検証と再現実験を行う事が現段階で重要課題と考え、次年度使用額を割り当てる計画である。
|