2018 Fiscal Year Research-status Report
Molecular biological analysis of pathological mechanism of adenoviral ocular infectious diseases and development of therapeutic measures
Project/Area Number |
18K09466
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
内尾 英一 福岡大学, 医学部, 教授 (70232840)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | アデノウイルス / 結膜炎 / 抗ウイルス薬 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで,アデノウイルス感染の実験モデルとしては,ヒトアデノウイルスに適したHeLa細胞やA549細胞による単層培養系(2D)やマウス,家兎などの動物モデルがあったが,後者は再現性が低く,臨床観察にも適するとはいえなかった。これらに対して,縦方向の厚みを持たせて細胞を培養する手法を3次元培養(3D culture)が実用化され,皮膚モデルに次いで,角膜細胞モデルが確立されてきた。本研究では,この角膜3Dモデル(LabCyte CORNEA-MODEL,オリエンタル酵母)を用いて,病原性の異なる複数のアデノウイルス型(流行性角結膜炎,咽頭結膜熱,気管支炎及び新型)を感染させ,その細胞傷害効果と病態を経時的に観察する。さらに角膜上皮下混濁の発症が,上皮基底層でどのようにどの時点から始まっていくのか,型間の相違も含めて解析を予定している。この結果により,新型アデノウイルスによるウイルス性角結膜炎の病態が明らかになり,抗ウイルス薬あるいはステロイド薬の早期介入が有効かどうかが判明すれば,臨床的に非常に有用といえる。2018年度には角膜3次元培養モデルを用いて,アデノウイルスを実際に感染させた場合の,細胞生存率とその病理学的解析を複数の型を用いて行った。その結果,新型アデノウイルスの中でも,85型が最も細胞生存率が低く,56型は生存率が高いことがわかった。また,上皮細胞のタイトジャンクションの機能を示すマーカーであるZO-1の発現率の低下が特に翼細胞で見られる傾向があり,アデノウイルス感染性が上皮細胞に与える影響について,新しい知見が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3D組織モデルを用いたアデノウイルス実験系における組織親和性のアデノウイルス型間の差異の検討と治療薬の有効性の検討を進めるにあたって,これまで使用されていなかった新しい実験モデルを用いた研究を進めているために,2017年度はその基礎的評価を行い,このモデルがアデノウイルス感染実験に使用できることを確認することができたので,次には抗アデノウイルス薬の増殖抑制作用についての評価を進めていくことができると計画している。以上から現時点では研究は順調に進捗しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型のアデノウイルスによるウイルス性角結膜炎は,2015年頃から,国内での流行型の大半を占めるようになっており,角膜上皮障害の遷延による視力低下が大きな臨床上の課題になっている。ステロイド点眼薬で一時的に改善しても,中止後の再発をくり返し,有効な治療法がない。アデノウイルスの遺伝子は多岐にわたっているが,中和反応に関係するヘキソン,組織親和性に関与するファイバーなどがこれまで,既存の型を中心に研究されてきた。今回の研究ではこれまで知られてきた遺伝子に加えて,初期転写因子E1A, E2, E3などに含まれる部位に着目し,新型を含めた多くの型や結膜炎を生じない型も含めて,詳細に遺伝子系統解析を行い,角膜病変重症化の遺伝子レベルでの原因部分の解明を行う予定である。これによって,臨床的な変化が遺伝子レベルで明らかになり,治療薬への反応部位の特定が可能になり,臨床的にも有意義な研究と考えている。
|
Causes of Carryover |
角膜3次元立体培養モデルの実験を遂行するにあたって,基礎自験の結果の評価をもとに必要な修正などを行うことを計画していたため,培養細胞系の必要経費が予算を下回ったために,次年度使用額が生じた。実験は順調に進捗しており,継続の計画を行うために,2019年度は予算通りの経費の支出が予想されている。
|