2018 Fiscal Year Research-status Report
皮膚常在菌及びHMGB1 A-BOXによる難治性皮膚潰瘍に対する新規治療法の開発
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18K09485
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
森 秀樹 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (60325389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 正基 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (20278302)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / HMGB1 Abox |
Outline of Annual Research Achievements |
創傷遅延の原因の一つに、創部での持続する病原性細菌感染とそれに伴う炎症反応の持続が挙げられる。通常は抗菌物質の全身投与が行われるが、そもそも遷延性難治性潰瘍周囲は瘢痕形成などにより血流が悪く、血液中の抗生物質の到達効率が著明に低下している。また、局所的な抗菌物質投与は耐性菌の早期出現を促すため、消毒剤や殺菌性外用剤が用いられることが多いが、これらは同時に細胞毒性を有するため、細胞毒性による創傷遅延を生ずる要因となっている。故に現在は、消毒・殺菌を行うのではなく、生理食塩水などを用いた洗浄処置による細菌量を減少させる方法が主流となってきた。しかしながら細菌増殖能が強く、これを制御できない場合は、やむなく消毒剤や殺菌性外用剤を選択・使用せざるを得ない現状にたびたび遭遇する。 我々はこのような難治性皮膚潰瘍にて対して、1)皮膚常在菌である表皮ブドウ球菌の競合的制菌作用と、2)炎症を遷延させる原因の一つである炎症性メディエ―ターの中で、生体のすべての細胞に存在する核内タンパクであるHMGB1(High mobility group box 1)に注目した。この表皮ブドウ球菌と抗HMGB1抗体であるHMGB1 Aboxを補助的に用いることによる抗菌・抗炎症効果を同時に目論んだ新しい治療方法の開発を試みる。 今回我々が提案する新規治療法は、細胞障害性を有さず、従来の抗菌物質投与と併用可能 な新たな治療オプションとしても期待される。この方法が効果的と判断されれば、臨床現場 での新規の強力な治療オプションとして還元される可能性は極めて大きいと見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.まず正常人角化細胞を用いた単層培養細胞に対し、マイクロピペット先端(100u用)を用いて、物理的創傷を作成した。その後、皮膚科領域細菌群(e.g., Group B, Streptococcus, Group A streptococcus, S aureus, MRSA, poly(I:C))を作用させて創傷治癒遅延モデルを作成した。細菌群では創傷治癒遅延がみられたが、細菌の増殖によりその後の刺激実験モデルとしては表皮ブドウ球菌以外の細菌群は殺細胞作用が強いため、poly(I:C)刺激によるモデルを用いることとした。 2.既に作成されたHMGB1 A-boxのプラスミドを使用し(Yang et al., PNAS, 2004)、愛媛大学プロテオサイエンスセンターにて、コムギ無細胞タンパク質合成技術によりRecombinant HMGB1 Aboxを作成した。 3.先ほどの創傷遅延モデルに対し表皮ブドウ球菌とHMGB1 Aboxを投与することで、創治癒の改善がみられた。次に細胞由来のLTA(lipoteichoic acid)とpoly(I:C)の創傷モデルでも改善がみられた。 4.次に三次元培養表皮(Livingskin equivalent; LSE)を用いて、同様な実験を行った。物理的創傷にはマイクロピペット先端を用いた。単層培養モデルとは異なり、LSEにおいては創傷治癒モデルの確立が難しく、さらに工夫が必要であると思われたため、現在創傷治癒モデルを作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
表皮ブドウ球菌とHMGB1 A-box合成ペプチドによる創傷遅延の改善につき引き続き評価検討を行いつつ、正常マウス(Balb/c)、TLR-2ノックアウトマウスの背部または耳介に形成した皮下膿瘍および創傷モデル(感染有群・無群)を作製したのち、表皮ブドウ球菌死菌含有外用剤、HMGB1 A-box合成ペプチドの効果と細胞毒性をそれぞれ評価した後、両者の混合軟膏を作製する。 マウスモデルにおける外用剤の効果を継続検討し、また人角化細胞に対する毒性を検討する。倫理委員会の承認を得たのち、表皮ブドウ球菌死菌およびHMGB1 A-box合成ペプチド含有外用剤をヒト難治性潰瘍(糖尿病性潰瘍など)に対して使用を試み、効果判定を行う。
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Causes of Carryover |
Reconbinant HMGB1の作製費が安く抑えられたことと、LSA実験が遅れたため、購入予定であったELSAキットの購入を見送ったため。
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Research Products
(1 results)