2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel autologous fat grafting method with high engraftment rate by oxygenation of aspirated adipose tissue.
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18K09494
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
堂後 京子 (佐々木京子) 帝京大学, 医学部, 病院准教授 (00622292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河内 真之 帝京大学, 医学部, 教授 (40313796)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自家脂肪注入 / 吸引脂肪 / パーフルオロケミカル / 酸素化 / 移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、自家脂肪注入移植による組織増大法が見直されている。しかし、脂肪細胞は虚血により障害されやすいため、生着率が50%前後と低く治療効果が不安定である。さらに、脂肪壊死に伴う石灰化、硬化、嚢胞を生じることが大きな問題となっている。そこで、移植前の低酸素状態にある吸引脂肪組織を、高い組織酸素化能と保存能を有する高濃度酸素化PFC(Perfluorochemical)に直接浸漬させ、酸素化したのちに注入移植することにより、細胞死を抑制し、生着率の向上を期待できると考えた。 本研究は、吸引脂肪組織を高濃度酸素化液体に浸漬し酸素化させる手法を用いて、臨床での自家脂肪注入移植において生着率が高く長期間安定な新たな移植法を開発することを目的とする。 本研究では、まず、実験動物およびヒトから採取した脂肪組織を用いて、高濃度酸素化液体への浸漬、酸素化により細胞死が抑制されることを確認し、移植の至適条件を決定する。次に、脂肪移植モデル動物を作成し、酸素化脂肪注入移植による生着率を定量的に評価し、長期経過観察により有効性と有害性を確認する計画である。 2020年度は、倫理委員会の承認を得て組織提供ボランティアから採取したヒト吸引脂肪組織を用いて酸素化による組織への影響を評価した。酸素加圧タンクを用いて作成した酸素分圧200mmHg以上の高濃度酸素化PFCに時間条件を変えて浸漬し、組織酸素分圧をニードル式酸素濃度計で測定した。対照として静置したヒト吸引脂肪組織の他に、高濃度酸素化生理食塩水および高濃度酸素化乳酸リンゲル液に浸漬させたヒト吸引脂肪組織を設定した。組織のviabilityと組織障害性について組織標本にて評価したところ、いずれの条件においても明らかな差が生じていなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究設備・環境の整備、各種手続きおよび審査に時間を要した。 倫理委員会の承認を得て組織提供ボランティアから採取したヒト吸引脂肪組織の高濃度酸素化液体浸漬による影響の検証実験において、組織のviability、組織障害性に明らかな差が生じておらず、また、当研究施設および実験動物施設の設備と規定に準拠する必要があり、脂肪移植モデル動物への移植実験に関し実験系の見直しを行うこととなった。 補助事業期間を1年延長し、脂肪移植モデル動物への移植実験は次年度に行う計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト脂肪組織の脂肪移植モデル動物への移植実験を開始する。 ヒト吸引脂肪組織を高濃度酸素化PFCと混合したのち低速遠心により精製する(a)。高濃度酸素化生理食塩水浸漬(b)、高濃度酸素化乳酸リンゲル液浸漬(c)、浸漬処理をせずに同様に精製した吸引脂肪(d)をコントロールとし、各々等量ずつNOD/scidマウス背部の皮筋層下に注入移植する。4週間後の移植組織の容積と重量の測定および組織学的検討を行い、ヒト吸引脂肪注入移植における生着状況を比較し、酸素化の効果を評価する。 さらに、長期の経過観察を行う群を作成し、移植3カ月、6カ月後に移植組織の容積と重量の測定および組織学的検討を行うとともに、PFC浸漬あるいは高濃度酸素(活性酸素)に関連する組織傷害、蓄積、悪性腫瘍発生などの有害所見がないか確認する。
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Causes of Carryover |
ヒト脂肪組織の高濃度酸素化液体浸漬による影響の検証実験において、組織学的には組織障害性に明らかな差が生じていなかった。このため、脂肪移植モデル動物への移植実験プロトコールの見直しが必要となり、動物移植実験に着手できなかった。 次年度は、PFC等の試薬、脂肪移植に用いるNOD/scidマウス等の実験動物、組織票本作成・染色等の費用および実験器具やセンサー等の消耗品費に使用する。研究成果は学術学会での発表および学術論文として公表する予定である。
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