2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel autologous fat grafting method with high engraftment rate by oxygenation of aspirated adipose tissue.
Project/Area Number |
18K09494
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
堂後 京子 (佐々木京子) 帝京大学, 医学部, 病院准教授 (00622292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河内 真之 帝京大学, 医学部, 教授 (40313796)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自家脂肪注入 / 吸引脂肪 / 酸素化 / 移植 / パーフルオロケミカル / 乳酸リンゲル液 |
Outline of Annual Research Achievements |
自家脂肪注入移植による組織増大法は、免疫反応や異物反応がなく、低侵襲に反復して施行できる優れた方法である。しかし、脂肪細胞は虚血により障害されやすいため生着率が50%前後と低く治療効果が不安定である。さらに、脂肪壊死に伴う石灰化、硬化、嚢胞を生じることが依然として問題となっている。そこで、移植前の低酸素状態にある吸引脂肪組織を酸素化することにより細胞死を抑制し、生着率の向上が期待できると考えた。 本研究の目的は、吸引脂肪組織を高濃度酸素化液体に浸漬し酸素化させる手法を用いて、臨床での自家脂肪注入移植における、生着率が高く長期間安定な新たな移植法を開発することである。 方法は、まず、実験動物およびヒトから採取した脂肪組織を用い、高い組織酸素化能と保存能を有する高濃度酸素化PFC(Perfluorochemical)に直接浸漬させ、組織の酸素化によって細胞死が抑制されることを確認し、移植の至適条件を決定する。次に、脂肪移植モデル動物を作成し、酸素化脂肪注入移植による生着率を定量的に評価し、長期経過観察により有効性と有害性を確認する。 2020年度に、倫理委員会の承認を得て組織提供ボランティアから採取したヒト吸引脂肪組織を用いて酸素化による組織への影響を評価した。ヒト吸引脂肪組織を高濃度酸素化PFCに時間条件を変えて浸漬し、組織酸素分圧をニードル式酸素濃度計で測定した。対照として遠心のみの脂肪組織の他に、高濃度酸素化生理食塩水および高濃度酸素化乳酸リンゲル液に浸漬させる群を設定した。組織のviabilityと組織障害性を組織標本で評価したところ、いずれの条件においても明らかな差が得られなかった。 2022年度は、ヒト吸引脂肪をヌードマウスの皮下に注入移植する「脂肪注入移植モデルマウス」の実験系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度から研究設備・環境の整備、各種手続きおよび審査に時間を要した。 この間に行なった基礎実験で、乳酸リンゲル液(Lactated Ringer’s solution: LRS)でもPFCと同様に液体の高濃度酸素化が可能であることがわかったため、検討に加えることにした。 倫理委員会の承認を得て組織提供ボランティアから採取したヒト吸引脂肪組織の高濃度酸素化液体浸漬による影響の検証実験において、組織のviability、組織障害性について免疫組織学的な検討を試みたが、明らかな差は得られなかった。評価方法(組織標本の免疫染色法)を検討し直す必要もあると考えた。 脂肪移植モデル動物への移植実験に関して,当研究施設および実験動物施設の設備と規定に準拠するために、実験系の見直しが必要となった。ラット自家脂肪注入移植モデルと免疫不全マウス脂肪注入移植モデルの実験は中止し、免疫不全マウス脂肪注入移植モデルへのヒト吸引脂肪注入移植における検証のみを進める計画となった。 ヒト吸引脂肪組織を高濃度酸素化PFCあるいは高濃度酸素化LRSと混合することにより酸素化させたのち、ヌードマウスの皮下に注入移植した。移植後1ヶ月、3ヶ月の移植脂肪を摘出し、重量の測定および組織学的検討を進め、酸素化脂肪移植の有効性と安全性の評価を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に、A. 高濃度酸素化PFC、B. 高濃度酸素化LRS、C. 遠心のみ(対照)の前処理を行なったヒト吸引脂肪組織をヌードマウスの皮下に注入移植した。現在、移植後1ヶ月、3ヶ月移植脂肪を摘出し、重量の測定および組織学的検討を行なっている。 組織標本の免疫染色によるviabilityおよび組織障害性に関する評価は,帝京大学医学部病理学講座との共同研究にて進めている。
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Causes of Carryover |
2022年度にヌードマウス皮下へのヒト吸引脂肪移植実験を行なったが、移植組織の摘出および解析は次年度に行うことになった。 次年度は、主に組織標本作成・染色(抗体)等の費用が生じる見込みである。 研究成果は学術学会での発表および学術論文として公表する予定である。
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