2019 Fiscal Year Research-status Report
全身に発現する味覚受容体の分子・生理・病態機能の解明
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18K09523
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
實松 敬介 九州大学, 歯学研究院, 講師 (70567502)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 味覚 / 甘味受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
味細胞に発現する味覚受容体は、全身の様々な臓器に発現し、体内のエネルギーおよび化学受容センサーとして生体恒常性の維持や生体防御に寄与することが示唆されている。これらのシステムの破綻は、生活習慣病やがんなどの病態と関連する可能性があり、その基礎として、味覚受容体とリガンドとの結合特性および受容体生理機能を解明することが必要不可欠である。 味覚修飾物質ミラクリンは、酸性条件下で甘味を誘導する甘味誘導効果を有する。以前行ったミラクリンの甘味受容体TAS1R2+TAS1R3に対する機能解析により、ミラクリンによる甘味誘導効果には、ミラクリンだけでなく甘味受容体TAS1R2+TAS1R3自体のプロトン化が完全活性化するのに重要であることを示した。このことから甘味受容体TAS1R2+TAS1R3は、酸性条件下でリガンドに対する感受性を変化させる可能性が示唆された。そこで甘味受容体TAS1R2+TAS1R3の甘味物質に対する感受性において、pHが与える影響を調べたところ、人工甘味料サッカリンの濃度応答が低pH条件下で低下することが明らかになった。このpH依存的なサッカリン濃度応答変化は、種差があり、ヒトには有効でマウスには無効であった。この種差を利用して、甘味受容体のどのドメインがこの効果に重要であるかを調べたところ、TAS1R3の膜貫通ドメインが関与していることが明らかになった。本研究により、甘味受容体は環境pHによって感受性の制御を受ける可能性が示唆され、他のGPCRの機能制御にも重要な知見を与えるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸性条件下で甘味受容体の人工甘味料サッカリンに対する感受性が変化することを示し、重要なドメインの同定にも成功した。クラスC GPCRの活性化機序においても重要な知見を与えており、おおむね計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
分子動力学法を用いた分子シミュレーションや結合エネルギー解析、および変異体を用いた甘味応答解析を用いることで、甘味受容体の活性化・不活性化における分子メカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由) 消耗品が安く購入でき節約できたため。 (使用計画) 概ね順調に進んでいるので適宜執行する。
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Research Products
(6 results)