2019 Fiscal Year Research-status Report
糖化ストレス分子メチルグリオキサールによる骨質劣化機序の解明とその改善方法の開発
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18K09528
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
吉村 健太郎 昭和大学, 歯学部, 講師 (10585699)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メチルグリオキサール / 骨芽細胞 / 活性イオウ分子種 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病は代表的な糖代謝異常疾患であるが、近年、糖尿病の新たな合併症として骨折の増加が注目されている。インスリン依存性の1型糖尿病では骨芽細胞のインスリンシグナルが不足することにより骨形成が低下し、骨量が減少することが知られている。一方、インスリン非依存性の2型糖尿病では「骨量は減少しないが、骨折リスクが上昇する」という特徴がある。その理由として、骨基質が終末糖化産物(AGEs)によって糖化変性し、骨質が劣化することで「硬くて脆い」骨になり強度が低下すると考えられている。しかし、2型糖尿病において骨量は減少せず高骨密度が維持される機序については未だ不明である。 これまでに我々は、2型糖尿病で血中濃度が増加するAGEsの前駆物質の1つであるメチルグリオキサール(MG)を培養系に添加すると、骨芽細胞株MC3T3-E1細胞の石灰化が亢進し、形成された石灰化物の性状が対照と比べて硬さが増加し、粘弾性が低下することを見出し報告した。前年度に活性イオウ分子種(RSS)がMGによる石灰化亢進作用を抑制する結果が得られたため、本年度はRSS合成酵素であるミトコンドリア型システインtRNA合成酵素(CARS2)に着目しMC3T3-E1細胞におけるsiRNA導入効果について解析した。その結果、CARS2の遺伝子ノックダウンはMC3T3-E1細胞のALP活性と石灰化を抑制することを見出した。これらの結果から、CARS2およびRSSは骨芽細胞の正常な石灰化に必要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにMGによる糖化ストレス抑制物質の1つとしてRSSを同定したが、本年度はそのRSSの細胞内における合成酵素であるCARS2が骨芽細胞の石灰化に必要であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
CARS2が骨芽細胞の石灰化物形成に必要であることをCARS2欠損マウスを用いて解析する。具体的にはCARS2欠損マウスの胎児または新生児から脛骨を採取し、器官培養を行い、μCTで石灰化度を解析する。さらに、CARS2欠損マウスの成体を用いて卵巣摘出術による骨粗鬆症モデルを作成し、骨密度の変化を対象と比較する。
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Causes of Carryover |
RSS消去酵素であるSQRDLについて、骨芽細胞において遺伝子ノックダウンを試みたが、元々の遺伝子発現量が少なかったためsiRNAの導入による効果が得られず、計画を変更し、次年度にSQR遺伝子ノックアウトマウスを用いて解析することにしたため。
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