2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K09529
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
近藤 真啓 日本大学, 歯学部, 講師 (50312294)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ストレス / 神経回路 / 糖質摂取 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエを用いて、摂食行動の定量法およびストレス負荷実験モデルを確立し、遺伝学・行動学・形態学・分子生物学的手法を併用して慢性ストレスにより生じる摂食行動異常に関わる神経システムの解明を目的に本研究を開始し、令和元年度は以下の結果を得た。 1.Gal4-UAS遺伝子発現システムを用いて、摂食行動に関与するニューロン(群)を検索した。ドパミン作動性ニューロンにdTrpA1を異所性発現させた個体群に熱刺激を行うと、絶食4時間以下(絶食なしを含む)の条件下でも野生型ハエの絶食16時間(空腹)群と同等のfeeding Index(FI, 糖質摂取の指標)を示した。また、蒸留水についても絶食4時間以下の実験群と対照群の間でFIに有意な差が認められた。これらの結果は、ドパミン作動性ニューロンが糖質や水分の摂取誘導に関与することを示している。 2.絶食なし・熱処理条件下において、上記のdTrpA1異所性発現ハエの脳内活動状態をpERKに対する特異抗体を用いて免疫組織化学的に解析した結果、ERKのリン酸化パターンは絶食16時間後の野生型ハエの脳で観察されたものと酷似した。この結果は、絶食に伴いドパミン作動性ニューロンの活動性が変化し、摂食行動が変容することを示唆している。 3.閉所ストレス、粉末塗布などの実験的ストレス刺激が糖質摂取量に影響を及ぼすこと、一部の慢性ストレス刺激でみられる摂取量の変化には雌雄差がある可能性などを行動解析により見出した。また、ストレス刺激により脳内pERKの免疫活性が上昇すること、その活性変化(pERKの脳内分布)はストレスの種類や持続時間により異なることなどを見出した。ストレス刺激に伴う脳内p38、JNKの活性化についても検討したが、現ストレス条件下では有意な変化は観察されていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドパミン作動性ニューロンの活動が摂食行動に関わること、空腹による糖質摂食欲求時に同ニューロンの活動性が上昇することを示唆する所見を得た。また、種々のストレス刺激で生じるFIおよび脳内神経活動の変化についての解析にも着手し、実績概要に示したとおり一定の結果を得ている。以上、第二年度に実施を計画した実験について一定の成果を得たことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
脳内におけるドパミン作動性ニューロン群のなかのいずれが、摂食行動の誘発またはストレスによる摂食行動の変化に関与しているのかを、研究計画書に記載の手順に従い、遺伝学的・行動学的手法を用いて検索していく。また、本年度までに用いてきた各種ストレス刺激モデルにおいて、ドパミン作動性ニューロンの活動性を人為的に変化させることで生じる糖質摂取量の変化、摂食行動の変容および脳内神経活動の変化(リン酸化ERKなどの分子マーカーを用いる)の解析を行い、これらの情報をもとにストレスに伴う摂食行動異常の神経基盤を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた試薬・抗体の一部がキャンペーンの利用で安く購入できた。また、予定していた生理学会への参加を取りやめたため、残金が生じた。 次年度への繰越金は、令和2年度の助成金と合わせて、本年度購入を予定している試薬・実験器具の入手のために使用するとともに、本年度参加が叶わなかった学会への次年度参加への費用に充当する。
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