2020 Fiscal Year Research-status Report
生理活性物質カートデューシンの受容体同定と炎症における役割の解明
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18K09534
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 隆史 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (80324789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇坂 聡 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (40158598) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カートデューシン / CTRP3 / 脂肪 |
Outline of Annual Research Achievements |
Cartducin(カートデューシン)はC1q/TNF-related protein 3 (CTRP3)ともよばれており、新たなカテゴリーである「C1q/TNFファミリー」に属する。令和2年度も前年度から引き続き、慢性炎症のモデルとして肥満にともなう脂肪組織を研究対象とした。すなわち、Cartducinノックアウトマウスおよび同腹野生型マウスを高脂肪食による食餌誘導性の肥満状態(DIO: Diet-induced obesity)にして、それぞれの表現型を比較検討したところ、ノックアウトマウスでは内臓脂肪の重量が有意に少ないことが判明した。また、内臓脂肪の組織を観察した結果、野生型マウスの脂肪細胞に比べてノックアウトマウスの脂肪細胞は細胞の大きさが小さいことが明らかになった。ノックアウトマウスと野生型マウスの両群の内臓脂肪において、脂肪酸合成に関わるFasn遺伝子や脂肪分解に関わるHsl遺伝子、脂肪細胞の分化に関わるC/ebpa遺伝子などの発現が有意に減少していることが明らかになった。ノックアウトマウスの内臓脂肪におけるこれらの脂質代謝関連遺伝子の発現量の減少が、脂肪重量や脂肪細胞の大きさに影響を与えたものと考えられた。 次に、前年度から引き続き、急性炎症のモデルとしてLPSの腹腔内投与によるノックアウトマウスと野生型マウスの両群間の比較検討も行った。すなわち、生後8-10週齢オスのノックアウトマウスと同腹野生型マウスにLPSを腹腔内投与して、投与後96時間までの生存率を観察した。ノックアウトマウスでは野生型マウスに比べて生存率が低い傾向が見られるものの、現時点ではデータのばらつきが多いため明確な結論は得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
(1)新型コロナウイルス感染症の影響、(2)所属する研究科の建物改修工事が急遽決まったため、研究室の仮実験室への移動や実験スペースの減少などが生じたこと、(3)慢性および急性炎症のモデルとして、Cartducinノックアウトマウスおよび同腹野生型マウスを準備する必要があったが、性別をオスで一致させたノックアウトおよび野生型マウスの組合せが同腹で生まれる確率が低いこと、などの理由により当初の計画より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
肝細胞の培養系において、Cartducinの刺激は肝細胞内のシグナル伝達物質のリン酸化を介して糖新生を抑制することが知られている。すなわち、肝細胞表面にはCartducin受容体が発現していると考えられる。これらを手がかりにしてCartducinの受容体分子の探索を予定している。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況が遅れていることもあり、研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なった。しかしながら、研究計画の全体に変更はなく、今後の研究の推進方策に基づいて前年度の研究費も含めて執行を進めていく。
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