2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K09547
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
長 環 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (90131870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲井 哲一朗 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (00264044)
田中 芳彦 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (00398083)
成田 由香 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (50758050)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 責任抗原 / Candida albicans / 免疫破綻 / 免疫寛容 / 口腔常在真菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究対象のカンジダはヒトの口腔に常在する微生物で、健常者では問題になることはありません。しかし超高齢の方や重篤な疾患を有し生体防御能が低下している方ではカンジダは、常在性から一転して治りにくい日和見感染症の病原体になります。常在菌による感染症の治療は一般的に完治が困難です。さらにカンジダは真菌(カビ)の仲間であり原核生物の細菌よりもヒトに近い真核生物なので、治療に用いる抗真菌薬の種類は極端に少ないです。このような常在微生物による感染症では、まず微生物が宿主に常在をする免疫学的な裏づけが必要と考えられます。カンジダは口腔や腸管の粘膜に常在しているので粘膜における免疫応答の制御機構で常在し、その機構の破綻が感染症への引き金と考えられます。よって、この免疫学的な機構を解明することは最も本質的な治療につながると思われます。 免疫機構を誘導するためには、カンジダ由来の責任抗原の特定が必要になります。カンジダは周囲の環境により酵母形発育や菌糸形発育を示す特殊な真菌です。そのために当該年度では酵母形および菌糸形カンジダのそれぞれの細胞を大量に集め、菌体由来タンパク質から免疫原性の強いタンパク質を選出することを行いました。その結果、菌糸形カンジダの細胞膜由来のタンパク質の中に、ナイーブCD4+T細胞から炎症などに関わるTh17細胞に分化誘導するタンパク質が含まれていることが明らかになりました。今後これらのタンパク質が制御性の免疫応答にも関わるのかを検討する予定です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫機構を誘導するためには、カンジダ由来の責任抗原の特定が必要になります。カンジダは周囲の環境により酵母形発育や菌糸形発育を示す特殊な真菌ですが、当研究室ではこれまでに菌糸形発育を示すカンジダの細胞膜に免疫機構を誘導するタンパク質が含まれている可能性がある研究結果を得ています。そのために当該年度ではまず菌糸形増殖のカンジダ細胞を大量培養しました。菌糸形細胞から回収する細胞膜の品質を一定化するために、培養温度、時間、培地成分の一定化に努め、顕微鏡による菌糸細胞形態の確認を行いました。大量の菌糸細胞の菌体破砕および遠心分離による細胞膜の回収を行い、さらに界面活性剤処理、脱界面活性剤処理を経て、細胞膜由来タンパク質サンプルを得ました。Th17細胞への分化誘導タンパク質を選定するために、この細胞膜由来サンプルを逆相高速液体クロマトグラフィーで6画分にわけ、各画分の濃縮を行い、Th17分化誘導能をフローサイトメトリー法を用いて検討しました。その結果3画分中に有効タンパク質が含まれる可能性が想定されたので、この3画分を二次元電気泳動により含有タンパク質の二次元分離を行いました。たんぱく質によるスポットをゲルから切り出し、プロテオミクス解析を行いました。その結果、MSスコアー100以上の候補タンパク質は23個、そのうちスコアー300以上の8たんぱく質に関して、カンジダゲノムからの遺伝子切り出し、および大腸菌を用いたタンパク質の増幅を行いました。これらのたんぱく質に関して、Th17分化誘導能をフローサイトメトリー法を用いて検討しました。各タンパク質での有効濃度の検討で、可能な限り低濃度でTh17分化を誘導するたんぱく質に注目しました。その結果、細胞膜および細胞壁でも活性を示すカンジダ表層タンパク質が3候補特定できました。ここまでは計画通りの進捗状況です。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時は、Th17分化誘導の責任抗原としてのペプチドを特定することで、最終的には主要組織遺伝子抗原複合体(MHC)と特異抗原が結合した複合体をストレプトアビジンで四量体(テトラマー)化したもの構築し、カンジダ抗原特異的T細胞を可視化して研究の質の向上を目的としていました。現在、責任抗原を含む可能性の高いタンパク質を単離できたことにより、1タンパク質をアルゴリズムを利用してペプチドの単位でTh17分化誘導能を検討する方向性もありますが、ペプチドのみでの誘導が可能なのか、アジュバントが必要なのかなどの問題点があります。今後の研究方針として1タンパク質の解析につき進む前に、当該研究の本来の目的であるカンジダが常在真菌であることを免疫学的に裏付けるために,先に単離した複数の候補アミノ酸を用いて、Treg分化誘導能を検討し、Th17分化誘導能との比較を行う予定です。すなわち常在菌による発症のメカニズムの一助になることを期待して研究します。
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Causes of Carryover |
当該年度に購入予定の微生物培養試薬の一部が使用可能期限の関係で、5万円分ほど次年度へ持ち越しになりました。次年度、購入する予定です。
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Research Products
(3 results)