2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜上のシアル酸修飾を起点とした修復象牙質形成機序の解明
Project/Area Number |
18K09587
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
室町 幸一郎 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 講師 (50637072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 信之 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (20163610)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 歯髄・象牙質複合体 / 修復象牙質 / BMP-1 / 糖鎖 / シアル酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、外来刺激にさらされた歯髄・象牙質複合体の防御反応である修復象牙質形成におけるプロテアーゼを起点とした機序を解明することで、歯髄保存療法へ応用することを目的としている。 申請者はこれまでの研究から、①健全歯と比較して齲蝕歯において象牙芽細胞様細胞および修復象牙質にbone morphogenetic protein (BMP) -1の発現が亢進すること、②BMP-1がヒト歯髄培養細胞の糖鎖プロファイリングの変化(グライコームシフト)をもたらすこと、③なかでもα2,6-linked sialic acid (α2,6-sia) 修飾が有意に減少することを見出している。 本年度はα2,6-sia修飾されるタンパク質の同定を試みた。すなわち、α2,6-siaに特異的に結合するレクチンであるSambucus nigra agglutinin(SNA)を用いたlectin columnによって精製したサンプルを液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析 (LC-MS/MS)へ供したところ、serotransferrin、serpin A12、glucosylceramidase(GCase)、keratin type II cytoskeletal 2 epidermal、InaD-like protein、pyruvate kinaseが候補タンパク質として同定された。 上記の候補タンパク質のうち、BMP-1の存在下では可溶性画分におけるGCaseが減少する一方で、不溶性画分のGCaseは増加することをWestern blotにて確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、精製した糖タンパク質を質量分析に供してコアとなるタンパク質の同定を行う計画であった。 α2,6-sia特異的に結合するlectinであるSNAをカラムに充填したSNA lectin columnへサンプルを供し、競合糖であるsialyl-lactoseにて溶出することでα2,6-sia修飾された糖タンパク質を精製した。精製後の糖タンパク質サンプルをSDS-PAGEにて展開後、ニトロセルロース膜へ転写し、HRP-conjugated-SNAを用いてlectin-probed western blotを行い精製の確認を行った。精製後の糖タンパク質サンプルを脱塩・濃縮し、SDS-PAGEにて展開後にCoomassie Brilliant Blue染色を行い、バンドが確認できたことから質量分析に必要なタンパク質量(0.1~1.0 mg/mL)は確保したものと判断した。 ゲルから切り出したバンドをLC-MS/MS解析へ供したところ、serotransferrin、serpin A12、glucosylceramidase(GCase)、keratin type II cytoskeletal 2 epidermal、InaD-like protein、pyruvate kinaseが候補タンパク質として同定された。 加えて、上記の候補タンパク質のうち、BMP-1の存在下では可溶性画分におけるGCaseが減少する一方で、不溶性画分のGCaseは増加することをGCase抗体を用いたWestern blotにて確認した。 従って、本研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果をもとに、今後は歯髄・象牙質複合体におけるGCaseの機能解析を中心に、他の5つの候補タンパク質の解析もあわせて研究を行う。 BMP-1によってα2,6-siaがはずれることでGCaseのconformationが変化し細胞内局在を制御する可能性が予想されることから、共焦点レーザー顕微鏡を用いた蛍光免疫染色を行う。 さらにGCaseに対するshRNAを用いたRNA干渉を行い、GCaseの硬組織形成における役割についても検討を行う。 BMP-1は象牙質形成において重要な働きを担っており、BMP-1ノックアウトマウスでは象牙質形成不全に加えて象牙芽細胞層の配列が乱れることが報告されている。 一方、GCaseの欠損によってglucosylceramideが肝臓、脾臓、骨髄などに蓄積し生じる先天性代謝異常疾患としてゴーシェ病(Gaucher disease)が知られている。病型によっては骨の形成遅延や歯の萌出遅延が認められることから、その発症にBMP-1が関与することが予測され治療における新たな標的因子になることが期待される。
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Research Products
(3 results)