2019 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮細胞を介した歯髄組織再生制御因子の網羅的解析と再生制御システムの創出
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18K09594
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
金子 友厚 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (70345297)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 歯髄再生 / 間葉系幹細胞 / 血管内皮細胞 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、間葉系幹細胞をスキャホールドとともに冠部歯髄を除去したラット臼歯歯髄腔に移植し、mineral trioxide aggregate(MTA)セメントで仮封すると、デンティンブリッジを有する歯髄組織が、約2週間で再生可能であることを報告し、歯髄組織再生の経時的な動物実験系を確立している。この実験系を用いて、間葉系幹細胞と血管内皮細胞を混合移植すると、血管新生能が亢進し組織の再生が促進されることも報告している。そこで本研究課題では、これまでの成果をさらに発展させ臨床応用への革新的技法を創成することを究極の目的として、血管内皮細胞を間葉系幹細胞と混合して移植した際に、再生組織中で特徴的に発現する「再生制御因子」を遺伝子網羅解析にて見出すとともに、同因子が血管内皮細胞、幹細胞、あるいはマクロファージの増殖、分化、活性化等に及ぼす影響を明らかにし、血管内皮細胞を介した歯髄組織再生の制御システムを見出すことを本研究の目的とし、研究を実施した。 昨年度は、 1. 上記歯髄組織再生動物実験において、活性化マクロファージM1およびM2の経時的な動態を検索するとともに、再生組織中のマクロファージ関連遺伝子に対して、経時的な発現の変化を検索した。 2. 血管内皮細胞と間葉系幹細胞との増殖能に及ぼす影響をin vitroにおいて検索し、NF-kBがそれぞれの細胞の増殖に影響をおよぼすことがわかった。 3. 移植する骨髄間葉系幹細胞あるいは血管内皮細胞に遺伝子を導入し、上記歯髄組織再生動物実験において検索したところ、骨髄間葉系幹細胞から分化した遺伝子導入細胞は、移植2週間後も移植組織内に分布し、それらの細胞の一部は、デンティンブリッジ様硬組織下の象牙芽細胞様細胞であることがわかった。また遺伝子導入した血管内皮細胞も移植部位で血管として分布していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究計画は、1) 再生歯髄組織における血管内皮細胞とマクロファージの動態の検索。2) 再生歯髄組織における遺伝子導入された血管内皮細胞と幹細胞の動態の検索。3) 血管内皮細胞による歯髄組織再生制御因子の絞り込みの実験を実施することであった。そして以下の実験結果を得て、それぞれの研究計画で論文として報告した。 1. 歯髄組織再生動物実験において、活性化マクロファージM1およびM2の経時的な動態を検索し、移植2週後ではM2マクロファージが有意に多数分布することがわかった。Gu B, Kaneko T, et al. Int Endod J. 2019;52:504-514. 2. 移植する骨髄間葉系幹細胞あるいは血管内皮細胞に遺伝子を導入し、歯髄組織再生動物実験において検索した。骨髄間葉系幹細胞から分化した遺伝子導入細胞は、移植後2週間後も移植組織内に分布し、それらの細胞の一部は、デンティンブリッジ様硬組織下の象牙芽細胞様細胞であることがわかった。また遺伝子導入した血管内皮細胞も移植部位で血管として分布していることがわかった。Kaneko T, et al. Stem Cell Res. 2019;38:101457. 3. 血管内皮細胞と間葉系幹細胞との増殖能に及ぼす影響をin vitroにおいて検索し、NF-kBがそれぞれの細胞の増殖能に極めて重要な影響をおよぼしていることがわかった。Zaw SYM, Kaneko T et al. Oral Dis. 2020 印刷中. 以上の結果から、昨年度の研究は、3誌の国際誌への発表を含み、当該年の研究計画と、おおむね順調に遂行されたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験結果から、ラットの歯髄組織再生制御因子として、Nf-kB Pathwayにある遺伝子群、Bcl-2~Nf-kB~CXCL1およびCXCR1が、重要な制御因子として同定されている。そこで、本年度は、この絞り込んだ歯髄組織再生制御因子からNf-kB Pathwayの上流に位置するBcl-2およびNf-kB遺伝子の2遺伝子を選択する。そして、エレクトロポレーション法にてNf-kBあるいはBcl-2遺伝子を血管内皮細胞へ形質導入し、同遺伝子を上方制御した血管内皮細胞を作成する。 そして、以下の3つの実験群; i)幹細胞のみ移植群、ii)血管内皮細胞のみ移植群、iii)幹細胞血管内皮細胞混合移植群に分けてラットを用いた動物実験を実施し、再生歯髄組織の評価を行う。移植期間は3, 7, 14日とする。 上記の実験を実施後、再生した歯髄組織を、H.E.染色を用いて組織学的に観察後、dentin sialophosphoproteinやnestinなどの象牙芽細胞マーカーを用いて免疫組織学的に再生組織の形成評価を行う。また、免疫レーザーマイクロダイゼクションにより、血管内皮細胞と陽性細胞周囲の組織をそれぞれ別々に採取し、Total RNAの抽出後、マイクロアレイシステムを用い各実験群において発現が特徴的に変量する遺伝子を、データ解析ソフトウェアを用いて解析する。 これまでの研究結果を統合し、血管内皮細胞を間葉系幹細胞と混合して移植した際に、再生組織中で特徴的に発現する「再生制御因子」を遺伝子網羅解析にて見出し、同因子が血管内皮細胞、幹細胞、あるいはマクロファージの増殖、分化、活性化等に及ぼす影響を明らかにし、血管内皮細胞を介した歯髄組織再生の制御システムを見出す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスのため研究計画の一部、縮小および変更が生じたため。
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Research Products
(12 results)