2019 Fiscal Year Research-status Report
口腔細菌カプノサイトファガをトリガー細菌とする歯周病発症機構の解明
Project/Area Number |
18K09608
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
菊池 有一郎 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (30410418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 和幸 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (00212910)
柴山 和子 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (60408317)
国分 栄仁 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (70453785)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 歯周病原細菌 / Capnocytophaga ochracea / 転写因子 / OxyR / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、口腔細菌Capnocytophaga ochracea (C. ochracea)と歯周病発症との関連性について検討することが目的である。環境変化に富む歯肉溝にC. ochraceaが慢性感染することが歯周病発症に必須と考え、その慢性感染に重要な役割を果たすと予想される転写因子に注目した。転写因子のなかで酸化ストレス消去に関係すると推測するOxyRタンパク質について、変異株の作製に昨年度成功し、野生株とOxyR変異株を用い阻止円形成法にて酸化ストレス感受性試験を行った。その結果、野生株に比べ変異株にて有意に酸化ストレスに対する感受性が増加した。 本年度は、C. ochracea OxyRタンパク質の基礎的データに関する実験を行った。最初に、インターネットにて公開されているゲノム情報から、C. ochracea OxyRタンパク質遺伝子(Coch_0002)と上流に位置するLuciferase-like monooxygenase (Coch_0001)遺伝子、下流に位置するcarboxyl-terminal protease (Coch_0003)遺伝子がオペロンを形成している可能性が考えられたので、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法により検討した。その結果、C. ochracea OxyRタンパク質遺伝子(Coch_0002)は、Coch_0001、Coch_0003とオペロンを形成していることが判明した。次に野生株とOxyR変異株を用い増殖曲線について検討したところ、野生株に比べOxyR変異株は遅滞期(誘導期)の延長を認め、定常期(静止期)に至るまでの時間が延長した。しかし、定常期の濁度については野生株とほぼ同等であったことより、OxyR変異株は周囲環境の変化に対する感知能力が劣っているか、感知した後の代謝活動の開始能力が劣っているか2つの可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では初年度に、C. ochraceaの転写因子であるECFシグマ因子(Coch_0230, Coch_0529, Coch_1288)全てについて、変異株作製を行う予定であった。だがCoch_0230変異株は作製に成功したが、その他の2つのECFシグマ因子遺伝子については変異株を得ることができなかった。そのため研究の進展の遅れを防ぐため、C. ochraceaの他の転写因子であるOxyRタンパク質の研究を進めることに計画を変更した。この転写因子については昨年度変異株作製に成功していること、また他の口腔細菌においてOxyRタンパク質の研究が報告されており研究を進めやすいことが予想され、昨年度の研究の遅れを取り戻せることが可能であると考えたからである。 このような経緯にて、本年度はOxyRタンパク質の変異株を用い初年度の交付申請書(様式D-2-1)の研究実施計画に記載した「B. 細菌学的アプローチ」として、C. ochraceaのゲノム上におけるOxyR遺伝子の特徴および増殖速度に関する性状解析実験を行った。それぞれの実験においてポジティブデータを得ることができたのだが、C. ochraceaと口腔レンサ球菌もしくは他の歯周病原細菌との共培養系におけるバイオフィルム形成量の変化に関する解析を行うことができなかったので、総合的判断結果として、「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果をもとに、最終年度はC. ochraceaの転写因子OxyRタンパク質が調節している遺伝子を同定し、その後OxyRタンパク質のC. ochraceaの病原性発現における役割を明らかにしたいと考えている。「現在までの進捗状況」でも記載したが、本年度に計画していた以下の2種類の解析を行う予定である。
① OxyRタンパク質が支配している遺伝子の同定。他の細菌においてOxyRタンパク質は酸化ストレスの消去に関与することが報告されているので、酸化ストレス消去タンパク質であるSod, AhpCの転写量についてリアルタイムPCR法にて解析する。これらのタンパク質の発現をOxyRが直接支配している可能性が高い場合は、EMSA法によりOxyRの組み換えタンパク質がプロモーター領域に結合するかどうか検討する。
② C. ochraceaと他の口腔細菌との共生関係の解明。早期定着細菌である口腔レンサ球菌、もしくは歯周病原細菌との共生について解析する。共生の対象細菌としては、デンタプラーク中の初期定着菌群の中で過酸化水素を産生する口腔レンサ球菌Streptococcus gordonii やStreptococcus sanguinis、後期定着細菌である歯周病原細菌の中では、レッドコンプレックス細菌としてPorphyromonas gingivalis, Treponema denticola, Tannerella forsythia, 他にはFusobacterium nucleatum, Prevotella intermediaなどを予定している。これらの細菌とC. ochraceaとの共培養実験系にて、野生株と比較し、変異株の場合の変化の有無について、バイオフィルム形成量をクリスタルバイオレット染色法や共焦点レーザー顕微鏡解析にて測定し、変化が認められる組合せを検討する。
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