2019 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病でのフルクトース過剰摂取が歯周病増悪因子となる可能性を調べる研究
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18K09609
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
田邉 奈津子 日本大学, 歯学部, 准教授 (10409097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 直人 日本大学, 歯学部, 教授 (10226532)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | GLUT4 / AGEs / COX2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は糖尿病つまり糖質代謝異常下でのフルクトースの過剰摂取と歯周病増悪の因果関係を骨芽細胞を用いて分子機構を細胞・分子生物学的に解明することを目的し,本研究を企図した。具体的には歯周病原因菌由来のリポ多糖(LPS)で炎症を惹起させた骨芽細胞の高グルコース及び高フルクトース条件下における炎症性サイトカイン産生量調べ,合わせて生体内の過剰な糖が生成する老化因子である終末糖化産物(AGEs)との関連についても解明する。平成30年度には高グルコース刺激骨芽細胞はLPS誘導性の炎症を増強させるという結果を得たのを受けて,その分子メカニズムを解明するために,令和元年度はグルコーストランスポーター4(GLUT4)に着目し,GLUT4の阻害剤を加えてLPS誘導性の炎症性サイトカイン産生に及ぼすグルコースの影響を調べた。その結果グルコースによるIL-6発現はGLUT4を介して制御されている可能性が示唆された。さらに関連実験として,2年目の令和元年度は,実験計画に記載した終末糖化産物(AGEs)のLPS誘導性炎症性サイトカイン産生分子メカニズム解明の前段階の実験として,現在グリセルアルデヒド由来のAGEsが骨芽細胞のLPS誘導性炎症性サイトカイン産生と加えて炎症の進行に関与していると言われている一酸化窒素合成酵素iNOSの遺伝子発現に及ぼす影響をmRNA発現の検索を行なった。その結果,LPS刺激骨芽細胞にAGEsを加えるとiNOSの遺伝子発現はLPS単独刺激と比較して増加傾向が認められたが統計学的有意差は認められなかった。つぎに炎症性ケミカルメディエーターPGE2合成酵素COX2の遺伝子発現についても調べた結果、AGEsはLPS誘導性COX2発現を有意に上昇させる事がわかった。この結果はAGEs がLPSで惹起した炎症を増強させ,歯周病の歯槽骨吸収に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の実績より,炎症性サイトカイン産生にフルクトースとグルコースの共刺激において顕著なフルクトースの影響が見られなかったことから,当該年度は高グルコース条件下で歯周病原因菌の1つであるE.coli由来のLPSを播種した骨芽細胞に刺激したものを,7および14日間以下に示す条件で培養しサンプルをそれぞれ回収し,炎症性サイトカインおよびOCNの遺伝子発現をreal-time PCR法で検索した結果,高グルコース条件下でLPS誘導性の炎症性サイトカインの遺伝子発現が上昇し,一方OCN発現は減少することが明らかになった。さらに炎症性サイトカインの中でもIL-1とIL-6のグルコースによる発現の上昇はGLUT4を介して遺伝子発現が制御されているという結果が得られた。また,関連実験としてのAGEsの炎症性サイトカイン産生の影響を調べる実験も順調に詳細が明らかになってきていることから2年目で計画していた実験の実施は概ね行うことができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間を通じてLPSとグルコースによる炎症性サイトカイン産生の影響についての詳細はGLUT4が介しているという新しい知見が得られたが、当該研究課題のフルクトースの影響については炎症性サイトカイン産生には影響が認められなかったが,歯周病によって失われた歯槽骨のリモデリングに及ぼすフルクトースの影響を関連実験として分子生物学的検索も含めて実施したいと考えている。 さらに,昨年度に引き続き生体内の過剰な糖によって生成されるAGEsとの関係についても骨芽細胞のLPS誘導性炎症性サイトカイン産生に及ぼす影響とその分子メカニズムを検索したいと考えている。 最終年度はこれらの結果を総括できるように進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は実験計画通りに順調に進んでいたため,実験に必要な物品を計画通りに購入していたが無駄がないように使用を心がけていた。また,当該年度に論文投稿料を計上していたが,論文投稿料が必要ない学術雑誌に投稿したため使用しなかった予算を物品費として使用した。しかし物品購入時にキャンペーンなどを利用し購入したため費用が抑えられたと思われる。次年度の繰越金は助成金と合わせて物品費として研究用試薬(培養培地,血清,PCR関連試薬)や実験器具(細胞培養用ディッシュ,細胞培養用ウェルなど)の購入を予定している。
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Research Products
(1 results)