口腔インプラントの脱落要因を探る：インプラント周囲細菌叢の時空間的解析

2018 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K09618
• Research Institution: Tokyo Medical and Dental University
• Principal Investigator: 下岸 将博 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 特任助教 (60747913)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 渡辺 孝康 日本大学, 歯学部, 助教 (70725514) ; 中川 一路 京都大学, 医学研究科, 教授 (70294113)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 歯科インプラント

Outline of Annual Research Achievements

この研究では、インプラント治療を行っている患者から、インプラント周囲に付着しているさまざまな細菌の集合体であるプラークを採取し、インプラント周囲にどのような細菌が生息しているかを調べることにより、インプラントが脱落する大きな原因の一つであるインプラント周囲炎の早期発見や、インプラント周囲炎に対する新しい治療法の発見につなげる事を目的としている。特に、インプラントが口の中に露出した直後から、時間が経過するにつれて周囲に生息する細菌の種類が変化していく様を観察し、インプラント手術の直後から周囲にさまざまな細菌がどのように定着していくかを分析する事で、プラークが成熟する前の定着する前段階に高い活動性を示す細菌を特定し、それらの菌に対する定着阻止のための対策を考案する足掛かりとするものである。
2018年度では、インプラント治療を行っている患者から、インプラントが口の中に露出した直後から、それぞれの時間間隔をあけてプラークを採取し、その中に存在する細菌の種類を遺伝子情報（DNA）を読み取ることで明らかにした。インプラント周囲に生息する細菌の種類は、口の中にインプラントが露出してからおよそ１か月半の間に、時間の経過とともに変化していく様を確認することができた。インプラント周囲に生息する細菌の種類は、患者毎によっても異なり、また、時間経過によっても変化していく事が明らかになった。インプラント周囲に生息する細菌の、患者毎による種類の違いは、他の歯の健康状態や、その患者の歯科治療の経過によっても、異なってくると考えられる。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

インプラント治療を行っている患者から、口の中にインプラントが露出してから、１週間後、２週間後、４週間後、６週間後でそれぞれプラークを採取し、遺伝子情報（DNA）を読み取ることによって、インプラント周囲に生息している細菌の種類を分析している。現時点で、４年計画の内、予定している対象患者数の約35％からプラークを採取し、データ解析まで進行中である。
今後も同様に、インプラント治療を行っている患者からのサンプル採取を継続して行い、3年を目安として予定患者数のサンプル採取を完遂する予定である、

Strategy for Future Research Activity

2018年度では、今までに歯周病に罹ったことのない患者に対してインプラント治療を行ったもののサンプルを採取してきた。インプラント治療においては、今までに歯周病に罹ったことのない人と、これまでに歯周病に罹ったことのある人では、将来的にインプラント周囲炎になるリスクが異なると考えられている。よって、2019年度では、歯周病に罹ったことのある患者に対してインプラント治療を行い、インプラント周囲からのプラークを採取し、遺伝子情報から生息している細菌の種類を確認し、インプラントが口の中に露出してからの時間経過による変化と、歯周病に罹ったことのあるなしによる差を明らかにしていく予定である。

Causes of Carryover

2018年度に予定した以上の患者数からのサンプル採取が終了しており、現在DNAシーケンス作業およびデータ解析を行なっている。2019年度に採取予定のサンプルと合わせてシーケンス作業およびデータ解析を進めるため、2018年度使用額の一部を2019年度使用分と合わせて試薬の購入および、データ解析に使用するスーパーコンピューターの利用料に充当する予定である。