2019 Fiscal Year Research-status Report
インプラントの新生骨が短期間で形成可能な生体骨アパタイトコーティング法の基礎研究
Project/Area Number |
18K09624
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中田 浩史 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (10349970)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リン酸カルシウム / 動物実験 / インプラント / Micro-CT / 新生骨 / 骨梁構造 / 表面処理 / 組織学的観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は生体微量金属元素のCO32-,Mg2+,Zn2+,F-をリン酸カルシウムに配合した生体骨アパタイト(Synthetic bone mineral: SBM)をインプラントにコーティングする表面処理法を開発し、埋入後に形成される早期な新生骨形成と骨質向上を明らかにする。 実験は9週齡ラットに全身麻酔を行い、左側大腿骨遠位端から10mmの位置に剃毛と消毒後、切開を行い、骨膜を剥離し骨面を露出する。埋入窩は大腿骨に直径1.2mmの孔の形成し、インプラントを埋入した。ラットは埋入後2週および4週後に大腿骨を摘出した。令和元年度の研究実績として、摘出した骨はインプラント引き抜き試験、骨密度測定および組織学的観察によりSBMによる骨質向上の有用性を一部明らかとした。 引き抜き試験で、インプラント埋入2週後のコントロール群は1.8±0.4NでSBM群は18.6±2.7 NでSBM群が有意に高い結果となった。インプラント埋入4週後のコントロール群は4.4±1.3 NでSBM群は24.4±5.1 NでSBM群が有意に高い結果となった。群内比較において、コントロール群はインプラント埋入2週後と比較して4週後で有意に高い結果となった。またSBM群はインプラント埋入2週後と比較して4週後で有意に高い結果となった。 骨密度測定ではインプラント埋入2週後のSBM群は770.0±49.7mg/cm3、コントロール群は437.8±71.0mg/cm3で有意に高い値となった。インプラント埋入4週後のSBM群は957.9±40.0mg/cm3、コントロール群は489.1±37.9 mg/cm3で有意に高い値となった。以上の結果から、SBMは骨代謝を早期に促進させて骨形成を優位にさせる材料であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では現在動物実験を終了し、摘出した骨の解析を行っている。その解析とはMicro-CTでインプラント周囲新生骨の骨密度をカラーで濃度差を出すように調整している。カラーで濃度差を出す目的はインプラントに接する側と骨髄側骨質には違いがあることをこれまでに研究発表しており、インプラントに接する新生骨の方が熟成が進むことが明らかとしてきた。よって、今回の研究の目的である生体骨アパタイトによる表面処理したインプラントに接する新生骨はブラスト処理(コントロール群)と比較して骨密度が高いことが明らかとなった。 また本研究では大腿骨に埋入したインプラントを引き抜き強度測定により接着強度測定を行った。これは生体骨アパタイトとブラスト処理(コントロール群)でインプラント埋入後2週間と4週間とで新生骨形成により接着強度の差を図る目的とした。その結果ではブラスト処理(コントロール群)と比較して生体骨アパタイト群では埋入2週と4週間とで優位な接着強度があることが明らかとなった。これによりインプラント周囲に形成される新生骨の骨量と成熟度に有意な差があることが明らかとなった。 さらには引抜き試験を行った骨を非脱灰標本作製し、ビラネバゴールドナー染色を行い、インプラント周囲に形成される類骨や石灰化骨への形成や経時的変化について観察を現在行っている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究では通常ラットに対して、機械研摩インプラントに2種類のインプラント表面処理を行った。1つはサンドブラスト処理(コントロール群)で、もう一つは実験群とする生体骨アパタイトによる表面処理とした。 今の所明らかに生体骨アパタイトによるインプラント表面処理が有用なことが明らかとなった。そのうえで今後は実験動物を通常でない実験群とすることで生体骨アパタイトの有用性をさらに見出すことが必要である。その方法として、卵巣摘出ラットを利用して今回と同様な実験を行うことが考えられる。卵巣摘出ラットでは卵巣摘出により骨芽細胞よりも破骨細胞が有意な生態系となることで骨形成が起こりにくくなる状況下となる。この卵巣摘出ラットは人間でいう骨粗鬆症を呈する状況となる。骨粗鬆症の患者は転んで寝たきりになると想定されるため、インプラント埋入しても新生骨形成が思うようにいかないことが考えられる。よって生体骨アパタイトの応用は骨粗鬆症患者のQOLを向上させるために生体骨アパタイトをさらに応用することを考える。例えば生体骨アパタイトを配合したサプリメントを摂取することで、全身の骨質を向上させることができれば骨粗鬆症で悩める患者への治療法の一助になりえることが考えられる。 さらに、生体骨アパタイトをブロック状に成型することが出来れば、骨欠損部を光学スキャンすることで、生体骨アパタイトブロックを3D-プリンターで成型加工後に骨欠損部へ補填すれば新たな骨補填材料を見込めることが考えられる。生体骨アパタイトは早い骨形成が認められるが、自身の骨への完全置換するかまだ明らかにしていない材料なので、様々なIn-Vivo実験で生体応用への道を明らかにすれば高齢者や骨欠損に係る患者へのQOLの向上へ繋がることが考えられる。
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