2019 Fiscal Year Research-status Report
Study of the bacteriostatic mechanism of developed Ti-Ag alloys using microstructure control
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18K09633
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 正敏 東北大学, 歯学研究科, 助教 (50400255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 雄京 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (10206766)
天雲 太一 東北大学, 大学病院, 講師 (80451425)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Ti-Ag合金 / 制菌性 / 組織制御 / 機械的性質 / 生体適合性 / 傾斜機能 / チタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、(1)熱処理により制菌性Ti-Ag合金の組織制御を試みる。そして、組織制御した合金と制菌性の関係を調べ、(2)Ti-Ag合金における制菌メカニズムを解明し、新たな機能性合金を開発するための基礎を構築する。さらに、Ti-Ag合金の機械的性質や耐食性を調べ、(3)制菌機能を強化したTi-Ag合金のインプラント応用の可能性を評価する。 平成31年度(令和元年度)は、合金組織制御の一例として、Ti-Mn合金とTi-Fe合金を設計試作し、その歯科鋳造体のX線回折試験と金属組織観察を行った。また、それら合金の耐食性や機械的性質、耐摩耗性を調べた。 【合金インゴットの試作】設計した合金組成となるようにスポンジチタンとマンガンあるいは鉄を秤量し、アルゴンアーク溶解炉を用いてボタン状の合金インゴットを溶製した。【鋳造体試料の作製】板状ワックスパターンを埋没材で埋没して鋳型を作り、歯科用チタン鋳造機で試作インゴットを鋳込んで板状試験片を製作した。【X線回折試験】試料の表面を耐水研磨紙で1000番まで研磨し、X線回折試験を行い、合金相を同定した。【金属組織観察】鏡面研磨後にエッチングした試料を光学顕微鏡で観察した。【耐食性試験】ISO 10271で規定された腐食液を作製し、アノード分極試験と溶出試験を行った。【引張試験】ダンベル状の試料を作製し、万能試験機で引張試験を行った。【摩耗試験】鋼球の圧子を用いて水中で往復摩耗試験を行った。【結果】試作Ti-Mn合金の合金相はα+βもしくはβ単相であった。いずれもチタンと同等の耐食性を示した。10~13%Mnの強度が著しく高かった。試作Ti-Fe合金の合金相はFe添加量の増加とともにα→α+β→β→β+TiFeと変化した。β単相でFeの固溶量が多い組成において耐摩耗性が優れていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合金組織制御の一例としてTi-Fe合金とTi-Mn合金についての研究を行い、添加元素量と合金相の変化を詳細に知ることができた。Ti-Fe合金やTi-Mn合金の平衡状態図は、本研究課題の主題であるTi-Ag合金と同じ共析型の状態図である。Ti-Mn合金の合金組織と耐食性の関係を調べた研究成果は、査読付きの和文誌に投稿し、受理された。また、Ti-Fe合金の合金組織と機械的性質あるいは耐摩耗性の関係を調べた研究成果は、査読付きの英文誌に投稿し、受理された。 これらの研究成果により、状態図と合金組織の関係の理解を深めることができた。今後のTi-Ag合金の組織制御に役立つ知識を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
【圧延加工】圧延機を用いてTi-Ag合金インゴットの圧延加工(強加工)を行い、金属組織観察により結晶粒の大きさや分布を調べ、加工度との関係を検討する。【真空熱処理】圧延により強加工したTi-Ag合金に対し、再結晶による結晶粒微細化と、共析反応によるTi2Ag の分散析出を目指し、真空熱処理を行う。熱処理温度と処理時間をパラメーターとする。X線回折と金属組織観察により組織制御を評価する。【バイオフィルム形成試験】細菌培養試験用品を用いて、試料をスクロース含有液体培地に浸漬し、バイオフィルム形成細菌を嫌気培養する。表面に形成されたバイオフィルムを回収して蒸留水に懸濁し、分光光度計で濁度を測定することで、バイオフィルム量を推定する。【殺菌試験】細菌培養試験用品を用いて、バイオフィルム形成細菌を試料上で、フィルム密着法により培養する。培養後に試験菌を洗い出し、寒天平板培養法で生菌数を求め、試験成立条件の判定を行う。試験が成立した場合について抗菌活性値を計算し、抗菌性を評価する。
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Causes of Carryover |
(理由) チタン系合金の状態図の理解を深めるため、本年度は様々な共析型のチタン合金について、特に組成と冷却速度と金属組織の関係を調べた。その結果、多量の石英管を消耗して費用のかかる熱処理を令和2年度に先送りしたためである。しかしながら、目指すべき金属組織やベースとなる組成が熱処理に先行してイメージできたため、試行実験回数を抑制でき、効率化できたと考えている。 (使用計画) 当初の予定通り、熱処理に必要な消耗品類と、大量に必要となるTi-Ag合金の材料に使用する。
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