2018 Fiscal Year Research-status Report
歯髄幹細胞分化における転写因子ネットワーク機構の解明
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18K09638
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
藤本 勝巳 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (40294566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 冬樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60400131)
金輪 真佐美 (福永真佐美) 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 助教 (00284208)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MSX1 / MSX2 / 歯髄幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯髄幹細胞は、骨芽細胞、脂肪細胞、神経細胞等への分化能を有する体性幹細胞の一つである。これまでの研究成果から、歯髄幹細胞に特徴的に高発現している転写因子MSX1が歯髄幹細胞の高い骨分化能と関係していることが明らかになってきた。そこで、MSX1の作用機構を解明するためにMSX1の下流で働く因子を、DNAマイクロアレイによって網羅的に解析した。 未分化状態の歯髄幹細胞をMSX1siRNAで処理し、MSX1の発現をほとんど消失させた。その細胞からRNAを抽出し、コントロールの歯髄幹細胞(コントロールsiRNAで処理した細胞)のRNA発現量と比較した。その結果、NF331,ZNF730などのzinc finger タンパク質やDACT1, WNT2, SHISA3, RPS6KA2などのシグナルタンパク質をコードする遺伝子の発現が、MSX1ノックダウンによって増加していた。一方、FOXS1やFOXA1などの転写因子、細胞間シグナル伝達に関わるセマフォリンファミリー遺伝子の発現がMSX1ノックダウン細胞では低下していた。 我々は、骨芽細胞に分化誘導した歯髄幹細胞でも同様の実験を以前行っており、今回の結果と比較した。そして、共通してMSX1ノックダウンにより影響を受ける遺伝子群(Wntシグナルに関わる遺伝子等)、および骨芽細胞分化時にのみ発現変化が見られる遺伝子群(コレステロール代謝に関わる遺伝子等)を特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
歯髄幹細胞に特異的に高発現している遺伝子としてMSX1, MSX2, TBX2に注目して、研究を進めている。歯髄幹細胞分化におけるMSX1の解析(特に骨芽細胞分化との関係)は進んでいるが、他の2つ遺伝子についてはまだあまり進展していない。その理由として、MSX1と比べMSX2とTBX2の歯髄幹細胞での発現量は細胞差が大きく、結果にばらつきが見られやすいためである。個体差の影響を無くすために、複数の歯髄幹細胞を用いて解析を行う必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロアレイ実験で得られた候補遺伝子から、MSX1の下流で作用し歯髄幹細胞分化を制御している遺伝子を絞り込む。また、骨芽細胞分化以外の分化(脂肪分化や神経分化)に対するMSX1の作用メカニズムを解明するために、MSX1のノックダウン実験を行う。MSX2,TBX2については、MSX2,TBX2の発現量の異なる複数の歯髄幹細胞を用いて分化誘導実験を行い、発現量と分化能の関係性について調べる。
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Causes of Carryover |
遺伝子ノックダウン実験および遺伝子発現解析に必要な費用が最初の予想よりも少なかったために、次年度使用額が生じた。 当初の研究計画に追加して、新たに脂肪細胞分化誘導した歯髄幹細胞のMSX1下流シグナル経路の解析実験を行う。次年度使用額はこれらの実験等に使用する。
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