2020 Fiscal Year Research-status Report
歯髄幹細胞分化における転写因子ネットワーク機構の解明
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18K09638
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
藤本 勝巳 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (40294566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 冬樹 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (60400131)
金輪 真佐美 (福永真佐美) 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 助教 (00284208)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MSX1 / 歯髄幹細胞 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯髄幹細胞は、骨芽細胞、脂肪細胞、神経細胞等への分化能を有する体性幹細胞の一つである。歯髄幹細胞の骨芽細胞/象牙芽細胞分化におけるMSX2の役割を解明するために以下の研究を行なった。 MSX2 mRNAの発現量をDNAマイクロアレイとリアルタイムPCR法により解析した。線維芽細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、変形性膝関節症患者の滑膜細胞、慢性関節リウマチ患者の滑膜細胞と比べ、歯髄幹細胞におけるMSX2 mRNAの発現量は、それぞれ15倍、40倍、35倍、4倍、8倍であった。また、培養した歯髄幹細胞と同様に、歯髄組織においてもMSX2 mRNAの発現は他の組織よりも高いことから、MSX2の生体内での機能が示唆された。一方、細胞の状態変化(細胞を骨、軟骨、脂肪細胞に分化誘導)や培養条件の違い(培養液組成の違い等)はMSX2 mRNAの発現に対してあまり影響しなかった。siRNAを用いてMSX2をノックダウンした歯髄幹細胞ではコントロールのsiRNAを処理した細胞に比べ、象牙芽細胞/骨芽細胞分化関連遺伝子であるアルカリンフォスファターゼ、タイプIコラーゲン、オステオカルシンのmRNA発現が顕著に低下した。これらの研究結果からMSX2は、MSX1と同様に歯髄幹細胞において骨芽細胞/象牙芽細胞分化を正に制御する因子であることが示唆された。歯髄幹細胞は骨芽細胞/象牙芽細胞分化能の高い細胞であることが以前から知られており、歯髄組織や歯髄幹細胞におけるMSX2の高い発現は歯髄幹細胞の分化能と関連していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯髄幹細胞に特異的に高発現している遺伝子に注目して、研究を進めている。MSX2は歯髄幹細胞に高発現している転写因子の1つである。歯髄幹細胞におけるMSX2 mRNAの発現量は、他の組織由来の間葉系幹細胞と比べ10倍近いことが分かった。MSX2 mRNAをノックダウンした歯髄幹細胞では象牙芽細胞/骨芽細胞分化能が低下したことから、MSX1と同様、歯髄幹細胞の分化能と関連していると考えられる。今後はそのメカニズムについても解析する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究でMSX1だけでなくMSX2もが歯髄幹細胞の骨芽細胞分化の促進因子であることが明らかになってきた。MSX1とMSX2の作用機序の共通点と相違点について解析する。また、歯牙組織における両者の発現部位についても解析する
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Causes of Carryover |
研究棟の改築に伴い、研究室の仮移転と本移転の2回の移転作業に数ヶ月を有した。その間、実験は中止していたため次年度使用額が生じた。次年度使用額は当初の研究計画に従ってMSX1,2の口腔内領域の発現解析実験に使用すると共に、歯髄幹細胞分化におけるMSX2の作用機序の解析実験に使用する。
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Research Products
(2 results)