2021 Fiscal Year Research-status Report
歯髄幹細胞分化における転写因子ネットワーク機構の解明
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18K09638
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
藤本 勝巳 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (40294566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 冬樹 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (60400131)
金輪 真佐美 (福永真佐美) 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 助教 (00284208)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 歯髄幹細胞 / MSX1 |
Outline of Annual Research Achievements |
体性幹細胞は組織の修復・再生の元になる細胞で、歯髄内にも歯髄幹細胞として存在している。う蝕や物理的損傷により歯が障害を受けると、前駆細胞や歯髄幹細胞が象牙芽細胞に分化し、歯髄内に反応象牙質や修復象牙質が形成され、組織が修復される。歯の修復・再生機構を解明するためには歯髄幹細胞の分化制御メカニズムを明らかにする必要がある。 歯髄幹細胞に特異的に高発現している遺伝子としてMSX1, MSX2ホメオボックス転写因子に注目して研究を進めている。これまでの研究から、MSX1, MSX2は歯髄幹細胞において骨芽細胞/象牙芽細胞への分化能を高め、脂肪細胞への分化能を低下させる因子であることが明らかになってきた。以前から歯髄幹細胞は他の成体幹細胞(骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来幹細胞、滑膜由来幹細胞等)と比べ骨芽細胞/象牙芽細胞への分化能が高いことが知られており、MSX1, MSX2の高発現がこのような歯髄幹細胞の性質に強く関係していることが示唆された。 また、歯牙損傷刺激によって分泌される炎症性サイトカインや口腔内細菌由来のLPSによって発現が誘導される遺伝子を歯髄幹細胞で調べた結果、TNF-αの刺激によってMSX1発現が約5倍増加することが明らかになった。最近の研究でTNF-α刺激を行なった歯髄細胞が骨芽細胞などへの分化能が高まることが指摘されており、MSX1との関連が注目される。一方、MSX2遺伝子に関しては、これらサイトカインやLPS刺激による発現誘導は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯牙損傷刺激によって分泌される炎症性サイトカイン(IL-1,IL-6, TNF-α)や口腔内細菌由来のLPS存在下で歯髄幹細胞を培養し、MSX1、MSX2等の遺伝子発現に対する影響を解析した。その結果、これらの因子の中で、TNF-αがMSX1遺伝子発現を約5倍増加させることが示された。今後、歯牙損傷時の歯髄内組織修復機能におけるMSX1の関与についても研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究でMSX1、MSX2が歯髄幹細胞の骨芽細胞分化促進因子であることが明らかになってきた。創傷治癒期に歯髄幹細胞が象牙芽細胞へと分化誘導されるが、創傷刺激とMSX1、MSX2の関係については不明である。そこで、歯髄創傷治癒過程におけるMSX1、MSX2の発現や活性について解析し、歯髄再生における両者の役割を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
研究棟の改築に伴い、研究室の仮移転と本移転の2回の移転作業に数ヶ月を有した。その間、実験は中止していたため次年度使用額が生じた。次年度使用額は当初の研究計画に従ってMSX1,2下流シグナル経路の解析実験に使用すると共に、当初の研究計画に追加してTNF-α刺激によるMSX1発現誘導メカニズムの解析実験に使用する。
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Research Products
(3 results)