2019 Fiscal Year Research-status Report
軟組織疾患の予防・治癒促進に寄与するカルシウムイオン徐放性歯科材料の開発
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18K09645
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
広田 一男 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (60563848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 貴俊 鶴見大学, 歯学部, 講師 (10313529)
岡田 彩子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (60515584)
花田 信弘 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70180916)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カルシウム / グラスアイオノマー / ラット / 骨吸収 / 歯周組織 / e-カドヘリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はカルシウム徐放ガラスを用いたグラスアイオノマーセメントを作製し、これも昨年度確立したラットを用いた歯周病モデルへの適応を中心にした動物実験によりCa徐放ガラスの歯周組織に対する影響を調査する研究を行った。今年度の評価は骨吸収の程度をマイクロCTでの測定を中心に行った。また、歯周組織のHE染色、免疫染色分析などにも取りかかった。 動物実験は次の3つの系で行った。①8週齢の通常のウイスター系オスのラットを用い、絹糸を1週間巻き、骨吸収を起こしたのちCa徐放ガラスを用いたグラスアイオノマーセメントとともに、反対側に比較のためにCaを徐放しないコンポジットレジンを接着塗布する系を標準的に比較検討した。この場合、有意差はないもののCa徐放ガラスを用いた骨の退縮は少なかった。②歯周炎を起こしてからCa放出ガラスを歯面に塗布するのではなく、歯周病予防効果を確認するため、歯周炎を起こす糸巻と同時にCa徐放ガラスを用いたグラスアイオノマーセメントと比較例としてのコンポジットレジンを反対側に接着充填した。1~2週間後に骨吸収を比較した。③Caの影響がより強く表れると予測される8週齢の骨粗鬆モデルである卵巣を摘出したCa欠乏ラットを用いて糸巻と同時にCa徐放ガラスと比較例としてのコンポジットレジンを用い②と同様なことを1~2週間後に比較検討した。 歯周病予防効果を評価した②と③の結果をまとめるとマイクロCTで測定した骨吸収の程度は、有意差はないものの大きい順にCa欠乏ラットにコンポジットを適応した系、次いでCa欠乏ラットにCa徐放ガラスを適応した系、次いで正常ラットにコンポジットレジンを接着塗布した系、正常なラットにCa徐放ガラスを適応した系の順番であった。すなわちCa徐放ガラスを用いたグラスアイオノマーセメントがCaを徐放しないコンポジットレジンに比較して骨吸収は少ない傾向があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究がわずかに遅れた理由の第1はラットの口腔内で接着充填した材料が脱離するケースがでてしまい、適応するグラスアイオノマーセメントの組成を物性向上の観点から再検討したことによる。本動物実験は窩洞形成の要因を排除するため、歯周組織歯肉に隣接する歯冠部歯質に材料を接着塗布充填する実験系で設計した。物性に基づいて光硬化型のグラスアイオノマ―セメントの方が口腔内での接着性が安定し、実験結果が安定すると予測した。しかしながら、実験に取り掛かると、少数ではあるが咬合圧で材料が取れてしまうラットが出てしまった。口腔内での溶解度、吸水性などに代表される化学的安定性、耐圧強度などの物性、Ca徐放性等の観点からは化学硬化型の方が優れていることは物性確認で明らかであったので、化学硬化型の唯一の欠点ともいうべき口腔内での歯面に対する接着性を臨床操作で改善できないか?再検討した。その結果、エナメル歯面を一層僅かに削除して、ポリアクリル酸で歯面を清掃、水洗することにより、化学硬化型でも窩洞形成せずにラットの口腔内での動物実験での接着性に全く問題がないことを見出した。むしろ物性が向上するので、ラットの口腔内で脱離することもなくなった。そこで、カルシウム徐放ガラスを用いた化学硬化型のグラスアイオノマーセメントを用いることにし、再配合したことによる遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床操作を見直すことによりグラスアイオノマーセメントを化学硬化型に変更し、口腔内での材料の安定性と接着性を共存することができるようになったので、ラットの口腔内に材料を適応する動物実験は安定的に進行できるようになった。当初企画した実験系はラットの臼歯に糸巻を行い、歯周病を起こさせてから糸を抜き材料を適応するものであった。しかしながら、Caの効果を確認するために、歯周病に対応する実験系ばかりでなく、糸巻きと同時に材料を充填することによる歯周病の予防を想定した実験系も行っている。またCa欠乏ラットに材料を適応することによってCaのE-cadherin接着効果をより確認できるのでは?と考えた。このような多角的な実験系を用いることにより、Caの効果を多角的にとらえられることを期待している。今後はこれらの各実験系での解析を広範に積極的に行い、研究を加速させ研究成果をまとめなければならないと考えている。次年度は引き続きマイクロCTを活用した骨吸収のデータをまとめていくことをベースに歯周組織のCa分布、カルセインを用いた骨成長速度の比較、HE反応とともにIL-6、Mcp-1などの免疫組織学的反応を多角的に遂行しカルシウム徐放性が歯周組織の病変の改善促進や予防効果にどのように働くか全体像を把握したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度予定していた軟組織のCa分析や組織学的な評価が遅れたことにより経費の未使用分が発生した。最終年度はさらなる動物実験の遂行、多角的な解析(マイクロCTを用いた骨吸収の解析、歯周組織のCa分析、免疫組織学的な反応の解析など)を積極的に行い研究成果につなげ、学会など発表できるようにしていきたいと考えている。
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