2020 Fiscal Year Research-status Report
マウスガードの咬合付与形態による身体平衡機能の相違と筋疲労との関連
Project/Area Number |
18K09668
|
Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
高橋 睦 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (80565010)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | スポーツ振興 / スポーツ歯科 / 姿勢制御 / 咬合 / 体幹 / 平衡機能 / 運動機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、健常人とスポーツ選手の身体機能の相違を解明し、さらに競技中の安全性向上のための身体疲労に対する支援とスポーツパフォーマンス向上に対する支援を行うことである。 2018年度の研究において、エリートレベルのジュニアバドミントン選手の咬合バランスと身体能力を調査し、両者の関連性を検証した結果、良好な咬合バランスは体幹の安定化を補助し、敏捷性に好影響を与えることが明らかとなった。 この結果を受けて、2019年度は身体の安定性やバランス感覚の指標とされる姿勢制御機能に着目し、健常人とスポーツ選手の静的姿勢制御機能の相違と、マウスガードの装着による姿勢制御機能への影響を検証した。その結果、咬合接触状態と姿勢制御機能との関連性は対象によって異なり、健常者は咬合状態と姿勢制御機能に相関関係が認められたが、トランポリン選手は咬合状態によらず姿勢制御機能が良好であった。また、マウスガードの装着による咬合接触状態の均等化によって両者の姿勢制御機能は向上し、この傾向は健常人よりもトランポリン選手で顕著に現れることが明らかとなった。 2020年度は、エリートレベルのハンドボール選手を対象として、姿勢制御機能と身体能力との関連性を調査した。身体能力はフィジカルフィットネステストの成績により評価した。検証の結果、姿勢制御機能は敏捷性、瞬発力、筋力、跳躍力を主体とするフィジカルパフォーマンスに影響することが明らかとなった。一方、姿勢制御機能と柔軟性、持久力、走力との関連はなかった。このことから、身体の運動方向が変わる際に生じる姿勢動揺に対して体幹の安定を利用する身体能力は姿勢制御機能と関連性があり、体幹の屈曲が求められる身体能力は姿勢制御機能と関連性がみられないことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究の結果、エリートレベルのスポーツ選手を対象とした研究によって姿勢制御機能と身体能力との関連性が明らかとなった。すなわち、姿勢制御機能が反映される身体能力と反映されない身体能力とが明確になった。 姿勢制御機能は、身体のバランスが崩れた時に元の姿勢に立て直す能力の高さを評価する指標である。スポーツ時には日常とは異なる様々な環境と状況の中で、特殊な動作を含むあらゆる体勢の変化が繰り返し起こり、多くの場合は階層的な反射や無意識での制御によって競技中の姿勢の安定性が保たれている。このことから、姿勢制御機能の優劣はスポーツ中の障害の発生率や重症度に影響すると言える。また、瞬時に体勢を立て直せると次の動作への移行が短時間かつ身体各所の負担が少なく達成されることから、姿勢制御機能はアスリートのパフォーマンスレベルに大きく影響する要因であるとも言える。したがって、本年度の研究結果は、競技中の安全性の向上とスポーツパフォーマンスの向上に対する支援の双方に繋がる知見が得られたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、姿勢制御機能と身体能力との関連性が明らかとなったため、マウスガードの装着による咬合接触状態の変化と身体能力との関連性を検証したいと考えている。対象者は筋力系とバランス系の競技に従事するエリートレベルのスポーツ選手に限定する予定である。これにより、競技特性を含めた検証が可能となり、障害予防と競技力向上とを重視した競技者支援に活用できると考えている。
|
Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由) 本年度は姿勢制御機能に着目した検証を行ったため、筋疲労測定に使用する器機を必要としなかった。また、論文投稿料が予定額より低く、英文校正料の支出がなかったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 研究資料収集と成果発表のための国内旅費と、論文投稿料に使用する予定である。
|