2018 Fiscal Year Research-status Report
Basic research of new examination on jaw and oral function with non-contact and non-wearing interface
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18K09707
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
大岡 貴史 明海大学, 歯学部, 教授 (30453632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野嶋 琢也 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (10392870)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 口腔機能 / 非接触舌・口腔運動認識システム / 介護予防 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,非接触舌・口腔運動認識システム・インターフェースを元に,舌・口唇の運動範囲の認知および口腔の運動プログラムを実用化し介入プログラムとした.今年度は都内某市有料老人ホームの入居者を対象として,介入研究を行った.入居者のうち,「技師の不適合や治療が必要な歯科疾患がみられない者」「口腔機能に関する通院やリハビリテーションを受けていない者」「1か月以内に入院などが予定されていない者」を選定基準として,研究参加同意が得られた8名を対象者として選定した.全員が軽度の介護で日常生活が送れているものの,「固いものが食べにくい」「口が渇くことが多くなった」「以前よりも長く話すのが大変になった」などの摂食や構音などの口腔機能に軽度の障害があった.年齢は71~87歳(平均77.1±6.1歳)であり,男性1名,女性8名であった.介入プログラムは「口唇の突出・すぼめ」「舌の突出」を約10分間行う内容とした.本プログラムは1日1回行うこととし,26日間実施された.口腔機能の指標として,反復唾液嚥下検査,口腔粘膜湿潤度,音節交互反復運動,舌圧を用いた.これらの指標を介入前および介入後で計測し,その結果の比較を行った. 介入後の計測では,反復唾液嚥下検査では6名で回数の増加がみられ,全員で嚥下回数の維持または向上が認められた.口腔粘膜の湿潤度は介入前後で顕著な差は認められなかった.音節交互反復運動の平均値では介入後の方が/pa/および/ka/で有意に増加した.舌圧の平均値も同様の傾向であり,8人中3人が介入前は30kPa以下であったが,介入後は30kPa以上と数値の向上が認められた. また,ゲームモードでは個人の得点が毎回表示されるようになっていた.対象者からは「得点がもっと高くなると思った」「以前よりも高い得点が取れるようになったのでまた続けたい」といった継続に意欲的な意見が聞かれた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プログラム内容の改善により,口唇や舌の誤認識はほぼ消失した.そのため,口唇や舌の運動の追跡や移動距離の計測などは当初の予定よりも早くクリアされた点は,次年度以降の研究実施に関して非常に好ましい結果となった. 約1か月間の介入が継続して可能であり,期間中にドロップアウトする対象者はほぼ生じないことが示された.また,介入前後の口腔機能の評価でも事前の予想通りの結果が得られたため,次年度のスケジュールを予定通り実施できる見込みである. 一方,知的能力障害やダウン症候群などの障害者が入所する施設は高齢者施設と比較して数が少ないこと,研究内容の理解やプログラムの実施が可能な者が高齢者と比較して少ないことから,次年度の研究対象の確保が十分にはできなかった.この点は予定よりもやや遅れている点であり,次年度の課題と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は「運動機能の変化(低下)が口腔機能のどの項目と関連するか」を高齢者にて検討し,運動機能計測の妥当性や実際の高齢者での機能低下との関連付けを行う. 1年目に得られた数値が口腔機能を実際に反映しているか,どのような実際の摂食嚥下機能やその障害,生活上での問題点などとの関連を探索する. 具体的には,①若年者の数値との比較,②健康高齢者と摂食または構音機能に障害がある高齢者または障害者との比較,③口唇や舌の運動機能の障害と低値を認めた計測項目(舌圧,音節交互反復運動など)との関連について横断的な解析を行い,口唇運動の数値の基準化を目的とした研究を実施する. 対象者としては,20歳代の健康成人30名,50~60代の健康成人30名,軽度の口腔機能低下を呈する高齢者20名,障害者20名として,上記の口腔機能に関する計測を行う.ただし,「著しい歯列不正や欠損がある者」「歯列矯正を行っている者または予定している者」「入院や手術などの予定がある者」は除外する. これらの対象者について,非接触・非装着インターフェースによる口唇や舌の可動域の計測と口腔機能の計測を行い,両者の関連を検討する.また,これらの数値の各年齢層やグループにおける基準値を求め,3年目に行う介入研究の基礎的データを蓄積する.
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Causes of Carryover |
当初予定していた口腔機能の計測のうち,舌圧,口腔粘膜湿潤度などの計測機材が予想よりも安価で購入できたこと,消耗品の費用も安価であったため物品費用が予定額よりも低額に抑えられた. 余剰の予算により,次年度に実施する研究の対象者を拡大または対象者数の増加が可能となった.対象者数を増やして新たに口腔機能測定の機器に関する消耗品の購入を行うとともに,得られた結果の解析ソフトの更新費用や学会発表の旅費などに充てる.
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