2018 Fiscal Year Research-status Report
高次エピゲノム制御を標的とした難治性口腔癌に対する新規治療戦略の開発
Project/Area Number |
18K09727
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
廣末 晃之 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (00638182)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 口腔癌 / エピゲノム / 治療抵抗性 / ヒストン修飾 / スーパーエンハンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は治療抵抗性の口腔扁平上皮癌(OSCC) 細胞株における網羅的ヒストン修飾の解析を行う予定としていたため、まずは高転移能を有するOSCC細胞株を用いて、ChIP-seq法にてヒストンH3の27番目リジンのアセチル化(H3K27Ac)の解析を行った。その解析データおよびデータベース上のヒストン修飾データから、いくつかの転移に関与する遺伝子領域への高集積状態を確認した。さらに、H3K27Acの高集積部位へBRD4が結合しているかをChIP法にて解析し、転移関連遺伝子のH3K27Acの高集積部位へのBRD4の結合を確認した。 また、Homerというソフトウェアを使用して、H3K27AcのChIP-seqデータからスーパーエンハンサー領域の同定も行った。同定されたスーパーエンハンサー近傍には放射線耐性および転移に関与する遺伝子なども存在しており、治療抵抗性に関与する遺伝子のエピゲノム異常にスーパーエンハンサーが関与している可能性が示唆された。 続いて、高転移のOSCC 細胞株および転移能の低いOSCC細胞株を用いて遺伝子発現アレイ解析を施行した。その結果、高転移のOSCC細胞株にて発現が上昇している遺伝子にてH3K27Acが高集積しているものがみられた。 さらに、高転移能を有するOSCC細胞株にてシスプラチンの抗癌剤感受性試験を行った。その結果、高転移能を有するOSCC細胞株はシスプラチンへの抵抗性を示した。 今後は抗癌剤耐性株および放射線耐性株についても網羅的なヒストン修飾を実施し、放射線耐性に関するヒストン修飾プロファイルを行い、OSCCの治療抵抗性に関与するエピゲノム異常の解明を進めたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は治療抵抗性の口腔扁平上皮癌(OSCC) 細胞株におけるエピゲノムの異常の解析を行う予定としていたため、高転移能を有するOSCC細胞株の網羅的ヒストン修飾の解析および遺伝子発現解析を施行した。また、スーパーエンハンサーの同定の解析も行うことができ、おおむね研究計画に応じた実験の遂行ができたと思われる。 しかし、抗癌剤/放射線耐性に関与するエピゲノム異常の解析など、未実施の実験もあるため、今後さらに実験を重ね、口腔癌の治療抵抗性に関与するエピゲノム異常について解明し、高次エピゲノム制御を標的とした難治性口腔癌に対する新規治療戦略の開発を目指したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はOSCCの治療抵抗性に関連する遺伝子群の高次エピゲノムの解析およびOSCCにおけるエピゲノム・プロファイルとその臨床的意義の解析を中心に解析を進めていく予定である。ゲノムワイドな解析から得られた遺伝子のエピゲノム情報をもとに、臨床検体(OSCCの組織)を用いて治療抵抗性に関与する遺伝子群の発現状態やエピゲノム異常(DNAメチル化、ヒストン修飾、高次クロマチン構造)を捉え、各種臨床病理学的因子との関連、再発・ 転移および生存率との関連、化学放射線療法の治療効果との関連性の解析を行い、エピゲノムプロファイルとその臨床的意義を検討する。また、得られたエピゲノムプロファイル、遺伝子発現プロファイル、臨床病理学的因子などの情報をコンピューターに機械学習させ、治療反応性や予後を予測する新たな診断法を確立する。 さらに、新たな治療法の創出を目指して各種エピゲノム治療薬を用いて、転移抑制や抗癌剤・ 放射線感受性におけるエピゲノム治療薬の効果を確認する。また、OSCCの治療に使用されている抗癌剤および分子標的薬、放射線治療との併用、さらに複数のエピゲノム治療薬の併用効果を確認し、新たなエピゲノム治療の実現を目指す。以上の検討により、本研究の目的であるOSCCの治療抵抗性に関与するエピゲノム異常を高次エピゲノムの観点から解明し、エピゲノムプロファイルに基づいた診断法とエピゲノム治療法を創出し、新たな治療戦略の開発を目指したいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由) 細胞培養等に使用する消耗品やChIP解析に使用する抗体の納期が間に合わなかったため、次年度分へ繰り越した。 (使用計画) 細胞培養に使用する消耗品やChIP解析に使用する抗体を購入予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Circulating miRNA-1290 as a potential biomarker for response to chemoradiotherapy and prognosis of patients with advanced oral squamous cell carcinoma: A single-center retrospective study2019
Author(s)
Nakashima H, Yoshida R, Hirosue A, Kawahara K, Sakata J, Arita H, Yamamoto T, Toya R, Murakami R, Hiraki A, Shinohara M, Ito T, Kuwahara Y, Nakayama H
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Journal Title
Tumour Biology
Volume: 41
Pages: 1-10
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Tumor budding as a novel predictor of occult metastasis in cT2N0 tongue squamous cell carcinoma.2018
Author(s)
akata J, Yamana K, Yoshida R, Matsuoka Y, Kawahara K, Arita H, Nakashima H, Nagata M, Hirosue A, Kawaguchi S, Gohara S, Nagao Y, Hiraki A, Shinohara M, Toya R, Murakami R, Nakayama H.
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Journal Title
Human Pathology
Volume: 76
Pages: 1-8
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] BRD4 is involved in high malignant potential in oral squamous cell carcinoma through the epigenetic regulation2018
Author(s)
Yuka Nagao, Akiyuki Hirosue, Tatsuro Yamamoto, Junki Sakata, Masafumi Nakamoto, Yuichiro Matsuoka, Hidetaka Arita, Hikaru Nakashima, Kenta Kawahara, Ryoji Yoshida, Noriko Saitoh, Hideki Nakayama
Organizer
日本癌学会
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