2019 Fiscal Year Research-status Report
口腔扁平上皮癌における癌幹細胞マーカーの解析と新規分子標的治療薬の開発
Project/Area Number |
18K09736
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
大西 祐一 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (70322568)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / 癌幹細胞 / 幹細胞マーカー / c-Met / c-Myc / Snail |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔扁平上皮癌(OSCC)において癌幹細胞は腫瘍の成長や分化、増殖に関与すると考えられており、その特性の解明は癌化や治療の進歩に大きく貢献すると期待されている。本研究ではOSCCにおけるNanog、c-Mycや、他の癌幹細胞性蛋白の発現と分化度やリンパ節転移の有無の進行度との関連を明らかにし、転移マーカーとなりうるかを検討することである。現在までに以下の成果を得た。 OSCCにおいてNanog、c-Myc、Snailそして癌幹細胞性に関与するc-Metは、いずれも低分化、そしてリンパ転移巣に陽性を示していた。特にC-Metは、DAVそして蛍光免疫染色においても浸潤増殖する腫瘍組織内に陽性反応を認めた。さらに、c-Myc、 Snailに関してもほぼ同様の結果を得た。 またOSCC細胞(HSC3)を用いて、癌幹細胞性とEMTについて検討した。HSC3はHGF処理により、Eカドヘリンはほぼ消失し、ビメンチンは明らかな発現がみられ、 HSCHGF処理によりEMT様変化を生じ、幹細胞性を得たことが示唆された。さらにc-Met阻害剤処理により、c-Metの発現が抑制され、未処理細胞と比べて遊走能の低下を示した。これらのことから口腔癌においても、 c-Met阻害剤が新たな分子標的薬として有用であることが示唆された。そこで、分子標的薬の一つであるセツキシマブに抵抗性を示すOSCC細胞であるCA9にc-Met阻害剤を添加したところ増殖を抑制し、セツキシマブとの併用では特に顕著な増殖抑制を示した。この結果についてはJODUに受理された。また、この結果の一部はCancers. 2019. 11(10):1552. にもアクセプトされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで口腔扁平上皮癌臨床サンプルにおけるNanog、c-Mycおよびその他の癌幹細胞性に関与する蛋白としてC-Metの発現と分化度やリンパ節転移の有無、Stageの進行度について検討し、いずれも低分化、そしてリンパ転移巣に陽性を示していた。特にC-Metについては高分化の腫瘍細胞内には陽性反応はほとんどみられなかったが、浸潤増殖する腫瘍組織内には顕著なC-Met陽性反応を認め、局在と発現様式を特定することができた。c-Myc、Snailについてもほぼ同様の結果を得た。 また、口腔扁平上皮癌細胞HSC3を用いて、癌幹細胞性とそれに深く関与している上皮・間葉転換(EMT)について、HGF/c-Metシグナル伝達経路の影響についても検討した。その結果、ウエスタンブロッド解析により、HSC3はHGF処理により、Eカドヘリンは24時間後にはわずかに減少し、36時間後にはほぼ消失した。それに反して、発現していなかったビメンチンは、 36時間後に明らかな発現が確認できた。この結果より、 HSC3はHGF処理によりEMT様変化を生じ幹細胞性を得たことが示唆された。また、c-Metの発現はわずかに増加し、リン酸化c-Metの発現は明らかに増加していたことから、 HGF処理によりHGF/c-Metシグナル経路が活性化されたことが示唆された。これらの事から、HGF/c-Metシグナル伝達経路が癌幹細胞性に深く関連していることが示唆された。そこで、分子標的薬の一つであるセツキシマブに抵抗性を示すOSCC細胞であるCA9にc-Met阻害剤を添加したところ増殖を抑制し、さらにセツキシマブとの併用では特に顕著な増殖抑制を示した。よっておおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔扁平上皮癌においてc-Metに関してはEMTに関連している事が分かったが、臨床サンプルにおけるその他の癌幹細胞性に関与する蛋白の発現と分化度やリンパ節転移の有無、Stageの進行度、そして予後や化学放射線療法抵抗性の関係を明らかにすることである。そして、発現様式の違いを検討し、分化マーカーや転移マーカーとしてなりうるかを検討する。また、Nanog、c-Myc、 そしてSnailについてもOSCC細胞株を用いた解析も行うことである。さらに、一般的な分化マーカーであるケラチン13や17も指標とする。 OSCC細胞では、現在HSC3で行っているが、今後はHSC4などの他のOSCC細胞についても検討し、同様の結果が得られるかを確認する。さらに、癌幹細胞性を有するOSCC細胞であるSASやKBとも比較して、Nanogおよびc-Mycの発現様式の違いを検討し、分化マーカーや転移マーカーとなりうるかを検討する。また、癌幹細胞性に深く関与しているEMTについて、HGF/c-Metシグナル伝達経路の下流のシグナル経路についても同定し、阻害剤の効果などについて調べる。最終的には、これらの結果を踏まえNanogおよびc-Mycの発現を抑制する分子標的薬との併用化学療法のレジメンの作成やc-Met阻害剤等の、新たな分子標的薬を検討することである。
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Causes of Carryover |
現在まで口腔扁平上皮癌臨床サンプルにおけるNanog、c-Mycおよびその他の癌幹細胞性に関与する蛋白としてC-Metの発現と分化度やリンパ節転移の有無、Stageの進行度について検討してきた。実際に現在かかる費用は、抗体購入やスライド作成等に係る費用のみがほとんどであった。また、OSCC細胞HSC3やCA9等についても、当科において保有しているOSCC細胞を用いており、現時点での研究にかかる試薬などについても、これまで行ってきた研究の続きであるため、幸いに保有している試薬類で賄えてきた。よって当初の予定より、現時点では経費は少なくすんでいる。しかし、今後の研究を続けて行く上で、新たな抗体の購入や、新たに試薬類等を購入する必要がある。さらに、新たなマイグレーションアッセイ等にかかる費用を考えると、予定の金額は必要となることが予想される。
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Research Products
(7 results)