2019 Fiscal Year Research-status Report
血管伸張の調節機構の解明による腫瘍血管の正常化方法の開発
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18K09782
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田村 潔美 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (90399973)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 血管 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内皮細胞の分化や増殖に比べ、血管伸張の分子機構には不明な点が多い。本研究では、血管伸張に関与するmTORC2の下流シグナルを明らかにすることで、血管形態の調節メカニズムの解明を目指す。 血管形成に重要な役割を持つ転写因子Foxo1を欠損したES細胞から分化した血管内皮細胞は、VEGFの刺激を受けても血管様伸張を示さない。申請者は、伸張機能が消失したFoxo1欠損血管内皮細胞の血管形態異常を、mTORC1の阻害によるmTORC2の活性化で回復できることを報告した(Tsuji-Tamura K et al. J Cell Sci.vol 129, p1165-1178, 2016)。また、株化血管内皮細胞を用いた解析によって、mTORC1/2阻害剤KU0063794の投与が微小管分布の異常を誘導し、細胞形態を変化させる一方、mTORC1阻害剤everolimusは影響しないことを明らかにした。mTORC2はPKCaの調節を介してアクチン制御に働くことが報告されているが、微小管における機能は明らかではない。しかし、これらの結果から、mTORC2は、これまで知られていたアクチン制御だけでなく、微小管構造の調節にも関与している可能性が示された(Tsuji-Tamura K et al. BBRC. vol 497, p326-331, 2018)。そこで、mTORC1, mTORC2の血管形成におけるin vitroとin vivoでの役割を解明するため、mTORC1とmTORC2の特異的サブユニットのシングル、またはダブルノックアウト血管内皮細胞を作製し、さらに血管特異的蛍光発現ゼブラフィッシュによるmTOR機能の解析を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、mTORC1とmTORC2の特異的サブユニットのシングル、またはダブルノックアウト血管内皮細胞の作製し、また、血管特異的蛍光発現ゼブラフィッシュを用いたin vivoの血管発生の観察を試みた。 株化血管内皮細胞による解析によって、mTORC1/2の阻害が微小管構造と細胞形態の異常を引き起こす一方、mTORC1の阻害では変化が起こらないことが示された。mTORC1とmTORC1/2の阻害はいずれも細胞増殖を抑制し、阻害剤間の差は見られないことから、mTORC1/2阻害の効果は細胞活性には関わらない、細胞骨格と細胞形態に特異的な作用として重要であると考えられた。そこで血管形成におけるmTORC1とmTORC2の機能の詳細を明らかにするために、2種類の血管内皮細胞株を用いて、それぞれの特異的サブユニットを標的としてCRISPR-Casゲノム編集によるシングル、またはダブルノックアウトを試みた。今後これらの細胞をもちいて、mTORC1, mTORC2活性の有無を確認し、血管形成、細胞骨格におけるmTOR欠損の効果を比較解析する。また、血管特異的蛍光発現ゼブラフィッシュとしてトランスジェニック系統Tg(fli1a:Myr-mCherry)ncv1の成魚を飼育し、交配によって受精卵を得ることで、発生期の血管形成を観察する準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、mTORC1とmTORC2の特異的サブユニットのシングル、またはダブルノックアウト血管内皮細胞のmTOR活性を確認し、さらに血管形成、細胞骨格の機能解析を行う。また、ゼブラフィッシュTg(fli1a:Myr-mCherry)ncv1による血管発生観察の準備を進め、mTORのin vivoでの役割を解析する。 これまでの研究によって、mTORC1, mTORC2は共に細胞増殖の促進に関与することが分かっている。一方、細胞骨格制御とそれに伴う細胞形態の調節については、mTORC2が特異的に働いていることが示唆されている。mTORC2はPKCの調節を介してアクチン制御に働くことが報告されているが、微小管における機能は明らかではない。そこで次年度は、mTORC1とmTORC2の特異的サブユニットのシングル、またはダブルノックアウト血管内皮細胞を用いて血管形成における細胞骨格の構造への影響を解析する。mTORの血管形成における役割をin vivoにおいて解析するため、各種mTOR阻害剤をTg(fli1a:Myr-mCherry)ncv1に暴露し、血管形成への影響を解析する。
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Causes of Carryover |
当初の計画とは異なり、ゼブラフィッシュを用いた解析を追加した。この血管解析モデルを利用して、次年度にin vivoでの血管形成の観察を行うことに変更する。
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Research Products
(3 results)