2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the regulatory mechanism of vascular morphology and development of methods to induce functional vascular structure
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18K09782
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田村 潔美 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (90399973)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 血管新生 / 転写調節 / 腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管新生は、既存の血管から新らしい血管が伸び出し血管ネットワークが広がる現象である。血管新生は個体発生や組織・器官の成長に必須の生理的な現象である一方、腫瘍や慢性炎症性疾患等の様々な病気の発生や増悪にも関与しており、疾患治療の効果にも大きな影響を与える。血管新生の進展には、血管内皮細胞の分化・増殖・形態変化などの複雑なプロセスが関与しており、それらの調節メカニズムの解明は、血管形成に対する基礎的な理解を深めるとともに、疾病の治療方法の開発に繋がると期待される。 本研究では、血管新生における細胞形態の特異的な変化である血管伸長に着目し、その調節機構について解析した。 血管伸長の調節は、環境中の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)濃度に依存的であり、低濃度VEGFでは転写因子FOXO1を介する経路、高濃度VEGFではFOXO1に非依存的な哺乳類ラパマイシン標的蛋白質(mTOR)を介した経路が関与する (J Cell Sci. 2016)。いずれの経路においてもRho-ROCKシグナルによるアクチンの制御が重要であるが、mTORC2による微小管分布の調節も関与する可能性がある (BBRC. 2018)。血管特異的に蛍光を発現するゼブラフィッシュ胚を非必須アミノ酸であるグリシンに暴露し血管発生を観察した結果、グリシンは濃度依存的に血管形成を促進または抑制するという二相生の作用を持つことを明らかにした (BBRC. 2020a)。またこれらの作用は、PI3K-Akt、mTORシグナルとの相互作用を持つことを報告した (BBRC. 2020b)。さらに、血管新生を抑制する新たな分子としてSM22(TAGLN)を同定しており (J Cell Sci. 2021)、これらの血管新生の調節因子は、病的血管新生においても治療標的としての可能性を持つと考えられる。
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