2018 Fiscal Year Research-status Report
歯周病による慢性閉塞性肺疾患(COPD)増悪機構の解明
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18K09783
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水田 健太郎 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40455796)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 短鎖脂肪酸 / 気管平滑筋 / 嗅覚受容体 / カルシウムイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、歯周病原細菌により産生された短鎖脂肪酸が気道閉塞をもたらすかを評価するため、短鎖脂肪酸投与で生じる気管平滑筋収縮作用における細胞内シグナリングカスケードについて検討した。 1.cAMPシグナリング 我々はこれまでに、ヒト気管平滑筋に短鎖脂肪酸受容体FFAR3が発現していること、また短鎖脂肪酸であるプロピオン酸を投与すると、FFAR3を介してcAMP産生が低下することを明らかにしている。しかし近年、短鎖脂肪酸を検知する嗅覚受容体の1つであるOR51E2の気管平滑筋での発現が報告されている。そこで我々は、プロピオン酸によるcAMP減少作用がOR51E2を介している可能性について検討した。その結果、OR51E2をsiRNAでノックダウンしたヒト気管平滑筋細胞では、陰性対照(non targeting siRNA処理群)と同様にプロピオン酸によるcAMP減少作用が生じた。つまり、短鎖脂肪酸によるcAMP産生減少作用にはOR51E2は関与しておらず、もっぱらFFAR3がその作用を担っていること示された。 2.カルシウムシグナリング 我々はこれまでに、短鎖脂肪酸をヒト気管平滑筋細胞に投与すると、細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させヒト気管を収縮させることを明らかにしている。本年度はその詳細なシグナリングカスケードについて検討した。プロピオン酸投与により生じる気管平滑筋細胞内カルシウムイオン濃度上昇作用は、Gi蛋白阻害剤(百日咳毒素)、Gβγシグナリング阻害剤(gallein)、フォスフォリパーゼC阻害剤(U73122)、イノシトール3リン酸受容体拮抗薬(Xestospongin C)の前投与により有意に抑制された。すなわち、この作用はGi蛋白-Gβγ-フォスフォリパーゼC-イノシトール3リン酸受容体経路を介して筋小胞体からカルシウムイオンを放出させる結果生じることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、予定通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、短鎖脂肪酸受容体を介した気管平滑筋収縮機構における細胞内シグナリングカスケードを確定し、論文発表する。また短鎖脂肪酸受容体を介した粘液分泌機構についても細胞内シグナリングを中心に検討する。 一方、当初計画していた短鎖脂肪酸受容体を介した気道炎症促進作用については既に海外の別グループにより報告されたため、代替案として歯周病との関与が近年明らかにされた長鎖遊離脂肪酸による気道炎症誘発、気道粘液分泌促進作用について検討する。具体的には、ヒト気管上皮細胞(16HBE14o- cells, NCI-H292 cells) への長鎖遊離脂肪酸投与によるIL-6, IL-8, TNF-α産生作用、MUC5AC発現について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
研究は順調に進捗しているが、研究費の使いきりを念頭に置かずに都度購入しているため、年度末に若干の剰余金が生じた。翌年度は、この剰余金を試薬・抗体類の購入に充てる。
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